いずれの湧水も、湧きだし口を注意深く観察すると、きれいな砂利層から地下水が流れていることが認められる。この砂利層が地下水層(帯水層)であり、鶴ケ島の湧水群を養う源となっている。
さて、いま仮りに、雷電池に近い池の台で井戸を掘ったとしよう。地表近くには黒土があり、その下は六メートルほどの赤土となる。それを掘り進んでいくと地下水がにじみでてくるところで、青白灰色の粘性のある粘土層となる。さらに掘りすすむと一―二メートルほどで粘土層をぬけ、きれいな栗石ほどの砂利層となり地下水が湧きでてくる。この砂利層は二―三メートルほどで粘土交じりのやや締まった砂利層となり、さらに五メートルも掘ると青灰色の締まった粘土となる。この粘土交じり砂利と粘土の互層は数十メートルほどあり、この付近の深井戸はこの地層から水をくみ上げている。
まず、井戸を掘りはじめて最初に赤土からにじみでてくる水のことを、専門用語で「宙水(ちゅうすい)」と呼んでいる。この地下水は下にある青白灰色の粘土に支えられており、不安定な水なのですぐにも枯れてしまう。ちなみに、英語では宙水のことをパーチド・ウォータという。それは「鳥籠のなかの止まり木にとまっているような水」の意味である。
青白灰色粘土の下のきれいな砂利層からでてくる地下水は、「本水(ほんみず)」と呼ばれている。かつて鶴ケ島でも、台地上の民家に掘られた浅井戸のほとんどが、この本水をくみ上げていた。この地下水は噴き井戸の水のように圧力をもたないことから「不圧水(ふあつすい)」とも呼ばれる。さらに掘りすすんで締まった粘土層をつらぬくと、地下水の水圧はやや高まってくる。この地下水は圧力をもつことから「被圧水(ひあつすい)」とも呼ばれており、深井戸の多くはこの被圧水をくみ上げている。
雷電池をはじめとする鶴ケ島の湧水のほとんどは、本水(不圧水)が、谷頭や谷底などの砂利層の浅いところから湧きだしているものである。