鶴ケ丘周辺でおこなわれた住宅団地建設のためのボーリングでは、武蔵野ローム層の下に、数メートルの厚さで、べとべとした青白灰色の粘土がどこでもでてくる。この粘土中には一部に水辺の植物の茎などがみられることから、火山灰が水中に積もってできたものと考えられる。発見された地名にあやかって、この粘土層を〝鶴ケ丘粘土層〟(Mc)と呼んでおこう。
このような火山灰質粘土層は南関東の各地で認められている。これらの粘土層は、いずれも下末吉ローム層の一部が水中に積もったものと考えられている。したがって〝鶴ケ丘粘土層〟も一部が下末吉ローム層に相当する可能性もある。
この〝鶴ケ丘粘土層〟は、坂戸・鶴ケ島台地の全域に認められるわけではなく、部分的に消滅しているところもある。とくに飯盛川の北西方向、坂戸付近では粘土も認められず、またローム層自体の厚さも薄くなっている。これらの地域では、台地の地形もやや低いことから、武蔵野段丘はさらに二段に細分される可能性がある。地質断面図では高い段丘を武蔵野Ⅰ面、低い段丘を武蔵野Ⅱ面として区分してみた。
この〝鶴ケ丘粘土層〟の存在のあるなしは、これからの重要問題となる地下水汚染と密接に係わってくると思われる。もしこの粘土層がない地域では、地表部の汚染が容易に深層にひろがる可能性を秘めている。いずれにせよ、〝鶴ケ丘粘土層〟に関してはまだ不明な点が多く、今後の調査に待つところが大きい。