下流湧水帯の謎解き

15 ~ 16
これまで述べてきた下流湧水帯の謎解きの過程を整理してみると、①鶴ケ島の湧水群が二列あることに疑問をいだき、②つぎに下流湧水帯の水が上流湧水帯にくらべて枯れにくいことに注目し、③上流湧水帯が高麗川扇状地の扇端湧水帯にあたること、④坂戸・鶴ケ島台地の地下に古い入間川扇状地がかくされていることまで追いつめてきた。もうここまでくれば、一つの解答をだしてもよいと思われる。
 結論からさきにいえば、雷電池や「まんざいろく」などの下流湧水帯は古い入間川扇状地の扇端湧水群の可能性が強いことである。もちろん入間川扇状地自体が古く、地形の原面がそのまま残っているわけではないので、正確な意味での扇端湧水群というのには問題がある。しかし、ⅰ下末吉相当の段丘から地下にむかって、金子砂礫層がよく連続すること、ⅱ復元された古い扇状地原面の形状からみて、現在の地形による局所的地下水流動系よりも大規模な広域的地下水流動系の存在があってもよいと思われる。
 最近の地下水学の考え方によれば、地下水の動きは三次元的なものであり、その起動力は地形のポテンシァルと地下水のくみ上げによる水圧の低下だといわれている。とくに深い被圧水の流動は、現在の地形よりもさらに大きな単元の地形のポテンシァルによっておこされる例が知られている。鶴ケ島の下流湧水帯も広域的地下水流動系の一部が、下の金子砂礫層を通して上の武蔵野砂礫層にはいりこみ、地表に湧水となって現われたものと考えることができる。
 このように考えてくると、下流湧水帯の規模が台地の集水域とくらべて大きいこと、湧水群の配列が入間川扇状地の原面に調和することなどもうまく説明できる。それとともに近年の下流湧水帯の水枯れの原因を、局所的な問題としてだけではなく、さらに広範な問題としてとりあげる必要を感じる。