民俗的には春は正月(一月)から始まる。一年の大きな区切りとして万物のよみがえりを願うもので、旧暦の正月はほぼ新暦の二月に相当する。鶴ケ島でも、地域によっては大正期まで月遅れで正月を祝ったという。現在の正月は春というにはやや早い。寒さの一番厳しい時期は、一五日の小正月を過ぎ下旬の大寒を迎えてからで、鶴ケ島の最低気温の記録も昭和三八年(一九六三)一月二五日に観測された。
正月には門松を飾る風習があるが、多くの木々が葉を落すこの時期にあって、常緑樹の松を立てて年の初めを祝った訳である。松の内最後の七日には、七草がゆを食べる習慣がある。最近は、ナズナの他にダイコン、ニンジンなどを入れて七草とする家庭が多いようである。この行事は、中国の初春に若菜を食す習俗が、日本各地の気候、風土に応じて様々な形で根付いたものといわれる。この他にも、正月には農耕に関わる予祝行事が多い。