七日頃に立秋となるが、実際には八月上旬は夏の最盛期で気温の最も高い時期である。これを過ぎると朝夕に何となく涼しさが感じられるようになり、夕立も降るようになる。しかし太平洋高気圧の勢力が強いと、安定した夏が七月下旬から引き続き、干害を受けることも多い。扇状地で水の少ない鶴ケ島では、陸稲はもちろん水稲も被害を受ける。雨乞いの行なわれる由縁である。
一日は八朔の節句といって、嫁にショウガを持たせて実家に戻す。「しょうがないから戻す」という意味で、逆に帰る時には箕を持っていく。「みなおしてくれ」という意というが、諸説がある。田畑ともに一段落した夏場の暑い時期、里帰りで一息入れさせようということである。旱天続きに雨が降ると、三日正月(雨降り正月)の布令が出て農作業を中断した。これにはお湿(しめ)りを祝うという意味と、農家の骨休めという意味があった。
日本の夏は高温多湿で不快指数が高く、いわゆる先進国としては異例であるという。埼玉では、昼の気温が高いばかりでなく夜になってもそれが下がらない。寝苦しい夜はよけい体力を消耗させるが、これは人間ばかりでなく稲にもいえることで、このため夜の涼しい長野や東北に多収の記録がある。