埼玉県が昭和五五年に「身近な緑の現況調査」を行い、植物と水面で覆われた地表面を緑被地とし、航空写真の判読に基づいて面積集計を行った。鶴ケ島町については表―4のようになっている。
表1-4 鶴ケ島町緑被状況 |
(昭和55年) |
全域 | 市街化区域 | ||||
総面積 | 緑被地面積 | 緑被率(%) | 総面積 | 緑被地面積 | 緑被率(%) |
17.77 | 11.51 | 64.8 | 6.77 | 2.85 | 42.1 |
単位はkm2 |
森や林や草原などの植物群落と呼ばれるような自然と、学校、工場、家庭の植樹地のような緑は同じでないけれども、この表から鶴ケ島町の現在の植物の世界の状況を、おおづかみに把握することができると思う。
わが国は温暖、多雨な気候に恵まれ、海岸、川原、高山などの一部の特別な場所を除いては森林が成立する力を持っている。鶴ケ島町を含め、日本の本来の植物的自然は森林であり、日本の自然は森林に覆われていた。その後、長い年月にわたる様々な人間の生活活動に伴って、自然が次第に改変され、鶴ケ島町では緑被地が全体の六四・八パーセント、非緑被地が三五・二パーセントになっている。
人間の手が入る前の自然の森林(原植生)はどのような森林であったのだろうか。アカマツ林やコナラ林などの雑木林は、人間のどのようなかかわり合いで成立し、維持されてきたのだろうか。スギやヒノキの人工林、クリや茶、クワ等の樹園地、水田、畑地、宅造地等は、それぞれ特有の管理が行われている。それらの人間の管理に巧みに適応し、そこを生活場所としている植物たちの姿はどのようなものだろうか。以上のような植物の世界に生きる植物たちの生活に注目しながら、まず、現在の植生の概況を見ることとしよう。