モウソウチク林の構成を表―8で見ると、低木層や草本層には、スギ、ヒノキ林と同様に、チャノキ、シラカシ、アオキ、ヤブラン、ジャノヒゲなど、この地の潜在自然植生であるシラカシ林の構成種が見られる。モウソウチク林は、棹の伐採やたけの子の採取が年々繰返され、適量の間引きが行われることによって、新しい竹の成長が促進され、モウソウチク林が維持されている。もし、竹材の利用をやめ、そのまま保護するような形で放置された場合、竹林自体が過密な状態となり、竹林は崩壊し、やがてコナラやシラカシなどの在来の植生へと移り変わってしまう。
表1-8 モウソウチク林の組成 |
中新田 | 五味ケ谷 | |||
高さ(m) | 12 | 24 | ||
植被率(%) | 95 | 90 | ||
高さ | - | 14 | ||
植被率 | - | 80 | ||
高さ | 0.7 | 6 | ||
植被率 | 5 | 30 | ||
高さ | 0.3 | 0.3 | ||
植被率 | 75 | 50 | ||
出現種数 | 50 | 43 | ||
高木層 | モウソウチク | 5 | 5 | |
亜高木層 | シラカシ | + | ||
ムクノキ | + | |||
低木層 | モウソウチク | + | + | |
チャノキ | 1 | + | ||
シュロ | 2 | |||
シラカシ | 1 | |||
アオキ | + | |||
ナンテン | + | |||
シロダモ | + | |||
キヅタ | + | |||
ムクノキ | + | + | ||
クサギ | + | + | ||
サワフタギ | + | |||
草本層 | オオバジャノヒゲ | + | 3 | |
ナカバジャノヒゲ | 2 | 2 | ||
ヤブラン | + | + | ||
シュロ | + | + | ||
シラカシ | + | |||
アオキ | 2 | |||
ジャノヒゲ | 4 | |||
キヅタ | + | |||
ヤブコウジ | 1 | |||
アマチャヅル | + | + | ||
イヌワラビ | + | + | ||
トコロ | + | + | ||
ミョウガ | + | + | ||
ハエドクソウ | + | + | ||
ナツヅタ | + | + | ||
ミズヒキ | + | + | ||
サワフタギ | + |
年々、適当量の棹やたけの子を採取し、利用することによって、年々変わらぬ竹林の利用をしながら、竹林が良好に保たれ、維持されている。
自然を保護することは、単に手をつけずに保護する(狭義の保護)ことだけでなく、利用しながらよい状態に保ち、将来にわたってその資源を人が利用できるようにすることも意味している。近年後者の保護を保全といっている。
竹林がよい状態に保たれるためには、適当な量の間引きが必要なわけで、毎年適宜の棹やたけの子の採取を行うことは、経験的なものであろうが、利用しながらよい状態に保つための巧みな保全技術といえる。