6 モウソウチク林に見られる巧みな保全技術

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 鶴ケ島町の全域にわたって集落の周辺にモウソウチク林が点在している。モウソウチクは中国原産の植物で、日本には一七〇〇年ころに渡来し、江戸時代末になって、棹の利用や食用のために広く一般に植栽されるようになったといわれている。
 モウソウチク林の構成を表―8で見ると、低木層や草本層には、スギ、ヒノキ林と同様に、チャノキ、シラカシ、アオキ、ヤブラン、ジャノヒゲなど、この地の潜在自然植生であるシラカシ林の構成種が見られる。モウソウチク林は、棹の伐採やたけの子の採取が年々繰返され、適量の間引きが行われることによって、新しい竹の成長が促進され、モウソウチク林が維持されている。もし、竹材の利用をやめ、そのまま保護するような形で放置された場合、竹林自体が過密な状態となり、竹林は崩壊し、やがてコナラやシラカシなどの在来の植生へと移り変わってしまう。
表1-8 モウソウチク林の組成
中新田五味ケ谷
高木層高さ(m)1224
植被率(%)9590
亜高木層高さ14
植被率80
低木層高さ0.76
植被率530
草本層高さ0.30.3
植被率7550
出現種数5043
高木層モウソウチク55
亜高木層シラカシ
ムクノキ
低木層モウソウチク
チャノキ1
シュロ2
シラカシ1
アオキ
ナンテン
シロダモ
キヅタ
ムクノキ
クサギ
サワフタギ
草本層オオバジャノヒゲ3
ナカバジャノヒゲ22
ヤブラン
シュロ
シラカシ
アオキ2
ジャノヒゲ4
キヅタ
ヤブコウジ1
アマチャヅル
イヌワラビ
トコロ
ミョウガ
ハエドクソウ
ナツヅタ
ミズヒキ
サワフタギ

 年々、適当量の棹やたけの子を採取し、利用することによって、年々変わらぬ竹林の利用をしながら、竹林が良好に保たれ、維持されている。
 自然を保護することは、単に手をつけずに保護する(狭義の保護)ことだけでなく、利用しながらよい状態に保ち、将来にわたってその資源を人が利用できるようにすることも意味している。近年後者の保護を保全といっている。
 竹林がよい状態に保たれるためには、適当な量の間引きが必要なわけで、毎年適宜の棹やたけの子の採取を行うことは、経験的なものであろうが、利用しながらよい状態に保つための巧みな保全技術といえる。