畑地

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畑地は、耕耘、施肥、除草など、一年を通じて人の管理が繰返される。ここには、耕作の合間をぬい、管理のすき間をついて、いろいろな植物たちが、畑地を生活場所としている。一般に耕地雑草と呼ばれる一群の植物で、いずれも短期間に発芽、成長し、開花、結実して、多数の種子を落下させる一年草であることが特徴となっている。
 また、窒素分の多い富栄養な土地を好み、発芽、成長する。
 耕地は、四季を通じ、さまざまな作物が栽培され、場所により、時により異なった管理が行われる。耕地雑草の生活も、種類によって異なり、発芽期、成長期間、開花期も異なる。発芽時期で見ると、シロザは春三、四月に、アオビユは四月末から五月に入って、メヒシバは六月から夏にかけて、カヤツリグサ、イヌビエなどはその後に発芽し、秋には越年性の耕地雑草が発芽する。こうして耕作の時期に応じ、様々な雑草が優占した群落が出現する。また、野生の植物が一般にそうであるように、耕地雑草の種子は、無数ともいえる実に多くのものが、土壌中に埋もれて休眠を続けている。ある条件が与えられても、全部の種子が一揃に発芽することなく、その一部が発芽して群落をつくり、一度できた群落が攪乱されても、再度発芽、成長して群落をつくる。人の管理に対するしぶといともいえる適性を持っている。
 除草などの管理が行きとどくと、ニシキソウ、スベリヒユ、クワクサなど小形で、地表をはうような雑草が多くなるし、管理の手がゆるむと、ノゲシ、オエノゲシ、キツネアザミなど茎が直立し、草丈けの高い雑草が優占してくる。秋にはハハコグサ、ホトケノザ、オランダミミナグサなどの越年性の雑草が発芽し、厳しい冬を地表近くで過し、春にいち早く成長を開始して開花し種子を実らせる。越年性の耕地雑草は、秋から春までの休耕期に生活し、畑地を生活場所としている。
 耕地雑草は、人間の管理の手が最も厳しい環境に適応した植物たちで、気候帯を超え、かなり広く普遍的に分布する種類が多く、耕地雑草群落はどこの地域でもよく似ている。関東一円のいろいろな耕地や雑草群落には、以上あげてきたような種類の雑草群に混じって、カラスビシャクとニシキソウなどが共通的に生活していることから、カラスビシャク―ニシキソウ群落と呼ぶ場合があり、鶴ケ島台地上の耕地雑草群にも、この特色が見られる(表―9)。
表1-9 カラスビシャク―ニシキソウ群落の組成
上広谷
草本層高さ(m)0.6
植被率(%)90
出現種数26
ハナイバナ2
キツネアザミ1
ノゲシ
オニノゲシ2
イヌガラシ3
クワクサ
コオニタビラコ
ウシハコベ
アカザ
ニシキソウ
ハハコグサ
スべリヒユ
メヒシバ4
ホトケノザ
トキワハゼ1
チョウジタデ
オヒシバ
ヒメムカシヨモギ
チャノキ
ヨモギ
イヌビエ
イヌビユ
イヌタデ
イヌホオズキ
カヤツリグサの一種2

 畑地は、ゆきとどいた管理が続いている限りは、作物の谷間で、一年生の雑草群落が成立し、消長を繰返しながら持続しているが、管理が不十分であったり、休耕地として放置されると、急速に群落は衰退し姿を変えてしまう。秋に発芽し、寒い冬を過したヒメムカシヨモギやヒメジョオン、オオアレチノギクなどの越年性の雑草が春から夏にかけて高さ二メートル近くにも成長し、密生した群落となって、耕地雑草は一、二年でほとんど姿を消してしまう。
 耕地雑草がいかに、耕地の管理下に適応した植物であるかが、このことからもうかがえる。越年性の雑草群落も、やがてヨモギやススキなどの多年草が侵入し、これらの多年草群落へ、急速に姿を変えてしまう。