空地、造成地の草地

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開発が進む鶴ケ島町には、宅地造成中の所や、空地が多い。特に住宅団地が開発されている富士見、太田ケ谷、鶴ケ丘附近に多く、ここにはススキなどが茂った草地がひろがっている。
 耕作地が放置されたり、森林が伐採されて間もないところは、耕地雑草や、ヒメジョオン、ヒメムカシヨモギなどの越年草が群落を作っている。年数が経過した場所は、ヨモギやススキ、アズマネザサなどが侵入して、多年草群落となり、定期的な刈込みによって草地が持続している。
 表―10は畑が放置されたところに成立したチガヤ群落で、メヒシバ、オニタビラコ、ミミナグサなどの好窒素性の耕地雑草がなお残っているのが見られる。チガヤは草丈けが三〇~四〇センチほどの小形のイネ科植物で、成長点が地表近くにあって、刈込みに強く、頻繁に刈込みが行われる場所に群落をつくる。刈込みの度合いが小さくなると、大形のススキ草原に変わっていく。
表1-10 チガヤ群落の組成
下新田
草本層高さ(m)0.4
植被率(%)85
出現種数36
チガヤ4
ワラビ1
アズマネザサ1
ミヤコグサ
ミツバツチグリ1
スズメノヤリ
ウツボグサ
ヨモギ1
メヒシバ1
オニタビラコ
ヨメナ
オオチドメグサ1
カタバミ
エノキグサ1
フユノハナワラビ1
ツルボ1
ヒメヤブラン
ヒメジョオン3
ヒメムカシヨモギ
アカネ
イチゴツナギ
ヘクソカズラ
ヒメミカンソウ
キツネノマゴ
ヌカキビ
ミミナグサ
ヒゴクサ
カラスノエンドウ2
ヤエムグラ
ノブドウ
イヌタデ
ノハラアザミ
ハルジョオン1
アキノノゲシ
クワの芽生え
カヤツリグサ属の一種

 空地や造成地の草地で、最も広く普通に広がっているアズマネザサ―ススキ群落(表―11)は、草丈けが二メートルを超える密生した群落を作る。比較的安定した群落であるが、刈込みが行われず、放置されると、アカメガシワ、ヌルデ、クサギなどの低木が成長し、林へと移り変わって、ススキ草原は衰退する。
表1-11 アズマネザサ―ススキ群落の組成
上広谷
低木層高さ(m)0.6
植被率(%)95
出現種数34
アズマネザサ5
ナワシロイチゴ
ススキ
タチツボスミレ
アオツヅラフジ2
ヘクソガズラ1
ヒナタイノコズチ
ケスゲ
ノチドメ
ハエドクソウ
ハルジョオン
ヤブマメ

 これらの草地に最初に侵入してくる樹木は、おおよそ種類がきまっていて、林縁のマント群落に出現する低木とよく似ている。低木林もそのまま長く放置が続くと、コナラ林へと移り変わっていく。
 その他に、森林が切り開かれた空地で、大形つる植物のクズが、草地全体をおおったようなクズ群落(表―12)や、路傍や畑地の縁に多いヨモギ群落(表―13)、農道やグランドなど人の踏み込みの激しいところにオオバコ群落(表―14)が見られる。オオバコ群落のオオバコ、スズメノカタビラ、オヒシバ、カゼクサなどは、茎葉を地表に伏せ、強い踏圧に耐えて生活している。
表1-12 クズ群落の組成
上広谷
草本層高さ(m)0.6
植被率(%)95
出現種数34
クズ4
アキノノゲシ
オオエノコログサ
フジ1
キツネノマゴ
ツユクサ
カタバミ
ヨモギ2
アキノキリンソウ1
ススキ1
アズマネザサ
フジ1
メヒシバ1
タケニグサ
ヌカキビ
ヨウシュヤマゴボウ
サルトリイバラ
メリケンカルカヤ
ハルジョオン
アキノタムラソウ
ナツヅタ
ヒメジョオン
ヒメヤブラン1
ヘクソカズラ
ケチヂミザサ1
コブナグサ
ヒメヒオウギズイセン
ノイバラ
カゼクサ
アシボソ
ヒカゲスゲ1
ヒメムカシヨモギ
ツルウメモドキ
ニガナ

表1-13 ヨモギ群落の組成
富士見
草本第1層高さ(m)1.8
植被率(%)90
草本第2層高さ0.2
植被率65
出現種数9
第一層ヨモギ5
アキノノゲシ
ヨウシュヤマゴボウ
クズ
アズキ
ヤマノイモ
第二層ヨモギ3
ウシハコベ3
オニタビラコ
ヒメジョオン

表-14 クズ群落の組成
上広谷上広谷太田ケ谷太田ケ谷
草本層高さ(m)0.40.30.20.2
植被率(%)85707090
出現種数461712
オオバコ2435
アキメシバ522
オヒシバ
スズメノカタビラ1
カタバミ21
ノチドメ41
カワラスゲ3
カゼグサ2
アズマネザサ
ヘビイチゴ1
イヌタデ
ヨモギ

 また、大谷川沿いのやや湿性の空地に、北米原産の帰化植物で、最近急速に全国に広まっているアレチウリが大きな群落を作っている。
 また、貧栄養な盛土上には、メヒシバやアキノエノコログサが優占した群落や、乾そうしやすい盛土上に、キンエノコロやアキノエノコログサが圧倒的に優占している群落が見られる。