図―17と18の花粉ダイヤグラムは、下から上にむかって、古い時代から現在までの植生の変遷を示している。
逆木池のTSボーリングでは、全部で五三分類群の花粉化石を認めることができた。下の試料ではハンノキ属、コナラ亜属、アカガシ亜属が多く、上の試料になるとマツ属やスギ属が多くなる。ヨモギ属は下から上にむかって少しづつ減少していく。深度七〇センチメートル付近のTS―4で草本の花粉が多い。この付近ではコナラ亜属やアカガシ亜属も多くみられる。全体としてみると、藤金の給食センターのTQボーリングとくらべて、スギ属の多いのが特徴といえる。
給食センターのTQボーリングでは、全部で六一分類群の花粉を識別することができた。下の試料ほどハンノキ属、コナラ亜属、アカガシ亜属が多く、上になるほどマツ属やスギ属が多くなる。その変化の途中にあたる深度五〇センチメートル付近のTQ―3試料では、草本の花粉が多くなる。とくにイネ科では、はっきりしたピークがみとめられる。ヨモギ属やカヤツリグサ科のピークは、イネ科よりも少し下位に出現している。
両地点とも、大まかにみればおなじような変化を示している。すなわち、はじめはコナラやハンノキ、アカガシなどからできた広葉樹林だったものが、しだいにススキ、ヨモギ、カヤツリグサなどの草本花粉の増加にみられるように草原がひろがり、ついでマツやスギなどの針葉樹林が多くなる。とくに、二葉マツと思われる花粉が急増することは、アカマツなどの二次林など植林の影響によるものと考えられる。
このような植生の変遷は、昭和五一年に埼玉大学の堀口万吉氏らによっておこなわれた東松山の東部低地帯の花粉分析でも知られている。とくにアカマツと思われる花粉は、地表近くで著しく増加している。堀口氏らはその原因を気候の変化によるものではなく、人為による二次林の成立に求めている。