炭素一四でタイムスケールをいれこむ

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さきに述べた植生の変化はいつ頃おきたのか、その疑問には、花粉は残念ながら答えてくれない。その解答はべつの方法にたよらなければならない。
 一九四七年にシカゴ大学のリビー教授は、天然の放射性炭素(炭素一四)が存在することを発見し、その放射能の半減期が約五、七〇〇年であることを確かめた。放射性炭素は植物や貝殻などの生物体が生きている間はその量は変わらないが、生物が死ぬと先ほどの半減期で減少していくことが知られている。この原理を利用したものが、これから話題の中心になる「放射性炭素による年代測定術」である。リビーはこの方法の発見でノーベル賞をもらっている。
 泥炭はもともと植物の遺体が集まったものなので、この年代測定法が適用できる。また炭素の含まれる量も比較的多いので、測定の結果も信用できる。そこで、今回求められた試料のなかから二試料を取りだし、第四紀総合研究会年代測定委員会をつうじて学習院大学木越研究室に測定を依頼した。
 逆木池のTSボーリング試料では、深度一〇〇―一一〇センチメートルから採取したTS―6試料の泥炭質シルトを測定した。その結果は五八五〇±二八〇年BP(Gak―12487)であった。この数値の単位である年BPの意味は、リビーが放射性炭素による年代測定法を確立した一九五〇年を記念し、その年から何年まえということを表わしている。この年数はBC三九〇〇年にあたる。括弧内の数字は学習院大学での測定番号を示す。
 給食センターのTQボーリングからは、深度一〇〇―一一〇センチメートルのTQ―6試料の泥炭を測定した。測定結果は七九六〇±二〇〇年BP(Gak―12488)で、BC六〇一〇年に相当する。