これらの測定値を参考にすると、さきに述べた植生の変遷史は、今から六、〇〇〇―八、〇〇〇年まえからの話で、繩文時代早期または前期以降の事件ということになる。
さきに紹介した東松山低地帯の調査結果では、アカマツの急増する深度八五センチメートルの絶対年代は、一四七〇±九五年BP(Gak―4043)の値が求められている。また深度三・四メートルのところで採取された木片の絶対年代は、三三六〇±一二〇年BP(Gak―4044)となっている。
今かりに、泥炭の堆積速度が一定だとすると、TSボーリングでのマツ属が急増するTS―2試料の年代として、簡単な比例配分で約一六〇〇年BPが求められる。TQボーリングでは、おなじくマツ属が急増するTQ―2試料の推定年代として、約二二〇〇年BPが求まる。
これらの数値からみると、二次林の成立の時期は弥生時代から古墳時代の頃ということになる。しかし、これだけの資料から時代を推定するのは早計であろう。泥炭の圧密による層厚の変化などを勘案すれば、さらに新しくなる可能性もある。むしろ考古学や歴史学を含め、その他の科学の分野からの詳しい検討がのぞまれる。