クサガメは太田ケ谷沼で見たが、もともといたものか、それとも誰かが飼育個体を放したものか、その点明らかでない。ヤマカガシの分布は広く、かつては町内全域に広がっていたと考えられるが、開発地域では退行が著しい。脚折北部地域では昭和五三年五月二七日、埋立地でふらふらになっていた成蛇二個体を見たのが最後である。水中に潜ってドジョウやおたまじゃくしを捕え、カエルを捕食するなど、水とかかわりある脊椎動物を主要な餌にしているため、水域の環境破壊は致命的なのであろう。アオダイショウの方は野鳥のひなを襲ったり、ネズミ類を捕えたりするので、カエルなども捕食しないわけではないが、水環境への連がりはヤマカガシほど強くない。区画整理で残ったクワ畑などを中心に脚折北部地区でもいまだに生き残り個体を見ることができる。
トカゲ類二種では、草むらに結びつきの強いカナヘビより、裸地的環境を好むトカゲの方が、環境破壊で、より早く姿を消すようである。開発地では、カナヘビの方はちょっとした空地に生き残っているが、トカゲの方はほとんど見かけることはない。天敵に対する身の安全性の違いと関係があるのだろうか。
ニホンアカガエル・トウキョウダルマガエル(普通、トノサマガエルの名で呼ばれているが、真のトノサマガエルは関東地方にはいない)は大谷川・飯盛川流域の水田を中心に多産したが、今では大谷川流域の一部と飯盛川源流部に生き残るだけである。脚折北部で埋立が始まり、旧水田地域に区画整理道路が出来たとき、トウキョウダルマガエルは水を求めて次つぎにマンホールに飛び込んだ。しかし悲しいかな、ゆびに吸盤をもたない彼らは、マンホール壁をよじ登ることができず、カエルの身でありながら水死という最も不名誉な死の宣告をうけたのである。累々たる死体とその死臭、忘れることのできない光景である。昭和五二年秋のことであった。
シュレーゲルアオガエルはいわゆる青蛙で、緑色の地に黄斑を散りばめた個体が多い。卵はメレングに似た泡で包み、その点モリアオガエルと同じであるが、産卵場所は樹枝上でなく、水田の畦などの土中である。四月初め、最初に降る雨で冬眠からめざめ、「コロロロッコロロロッ」と美しい声で鳴く、童謡の「銀の笛」の〝月夜の田んぼで笛を鳴らすカエル〟はこのシュレーゲルアオガエルであろう。
シュレーゲルアオガエル かつては水田でにぎやかな合唱を聞かせていたが,最近は非常に少なくなった.鶴ケ島ではたして生き残れるだろうか.
しかしこのカエルも水田の埋立てなどで生息地が狭められている。脚折北部地区は昭和五二年、埋立てはほぼ完了したので、それ以後新しく育ったシュレーゲルアオガエルはいないはず。ただシュレーゲルの場合、ゆびに吸盤があり、植物体上で生活することが多いので、産卵期以外には特別な水域を必要としないで済む。したがって埋めたてにより、ほとんど完全に止水域を失った区画整理地区内にも、なおしばらくは生き続け、降雨で水溜りができたときなど、その周辺の草地に集まり、にぎやかな合唱を聞かせてくれた。しかしこの残党も、昭和五六年春を最後に消息を絶った。飯盛川周辺では寿橋付近の水田跡地と鶴ケ島中学南西の水路付近に僅かの個体が生き残っているだけである。池尻池も産卵地に利用されてよいと考えられるがここでは確認できない。雷電池には池改修前かなり多かったが現在生き残っている個体は少ない。しかも池の環境がシュレーゲル的でないため、この個体が世代を重ねることは難しいように思える。大谷川流域では五味ケ谷・藤金などに生息域が残り、今のところ比較的個体数も多い。しかし昨年(昭和六一年)は藤小前の生息地が早くも埋立てで消滅した。今のうちに恒久的な生息環境を確保しておかない限り、このカエルの幻化は必至であろう。
アマガエルはシュレーゲルアオガエルに似るが、体はさらに一まわり小さい。目の付近にパンダ模様がある点も異なる。シュレーゲルアオガエル同様、植物体上で生活するので、産卵場所さえ確保できれば、案外狭い環境で生き残れる。脚折北部ではシュレーゲルアオガエルがいなくなった今日でも、まだ鳴き声を耳にする。しかし産卵場所、幼生の生育場所が見当たらないので、いま生き残っている個体が敵に襲われて命を落とすなり、寿命がつきるなりすれば、脚折北部はアマガエルのゼロ地帯に変貌するであろう。そしてそれは、もはや時間の問題だといっていいくらいである。
ヒキガエルも変態完了後は、水辺を離れて生活できるため、産卵場所さえ確保されていれば都市化などにも比較的強い。鶴ケ島では池尻池・逆木池・雷電池・太田ケ谷沼などの池沼はもちろん、社寺境内や民家の池など、ちょっとした水場まで産卵場所に利用されている。また、ナガレヒキガエルは別として、普通のヒキガエルが流水に産卵することはめったにないが、飯盛川では、流速のゆるやかな地点を選び、あちこちにヒキガエルが産卵する。産卵場所が減少しているためであろうか。