第二節 昆虫類

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 昆虫の種類は非常に多い。名前のついている種類だけで日本に約二五、〇〇〇種、世界では約七七〇、〇〇〇種知られている。しかもこれですべてではない。まだまだ学界に知られていない名なしの権兵衛がどれだけいるかわからないのである。脊椎動物の種類数が、世界全体で哺乳類四、五〇〇、鳥類八、六五〇、爬虫類五、〇〇〇、両生類二、〇〇〇、魚類一六、〇〇〇、それらを全部合わせても三六、〇〇〇種程度であることと比較してみたら、いかに昆虫の種類数が多いか理解できよう。
 鶴ケ島の昆虫については、昭和四二年以来、筆者によって調査が続けられ、今日までに約一、五〇〇種確認されている。内訳は、チョウ・ガの類約五〇〇、カミキリ・テントウ・コガネ・クワガタなど甲虫(こうちゅう)のなかま約五〇〇、その他の昆虫約五〇〇である。しかし、実際に生息していながら未確認の種類がまだまだ多い。チョウとか甲虫の一部(例えばテントウムシやハムシなど)のように、比較的調査の行き届いたグループの生息状況から、そうでないグループの種類数を比例法で推定してみると、どんなに少なく見積っても、なお一、〇〇〇種、すなわち、全体では二、五〇〇種を下らないという結論にたどりつく。もちろん、それらの中には学名さえつけられていない新種も含まれていることであろう。
 しかし、その一方、鶴ケ島の昆虫は、予想される種類数に達しないのではないかという懸念もある。開発の激しい鶴ケ島では、昆虫相の豊かな森林・草原・池沼・流水など次つぎに失われつつあるので、そこに生息している、あるいは生息していた種類が確認されないまま、姿を消してしまう可能性が大きいからである。現に、今まで筆者によって記録された昆虫の中に、すでに鶴ケ島地区から絶滅したと考えられる種類が少なくない状況である。ノミやシラミなど衛生害虫がふえるのを望む人はあるまいが、そうでない一般昆虫の場合は、やはりその温存に心すべきであろう。これらは自然の豊かさを示すバロメーターでもありうるからである。