2 ガ類

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 ガ類の調査は脚折町二丁目にある筆者宅での灯火採集を中心に実施し、今までに約四五〇種を確認している。それらについての詳しい解説は省略するが、特徴的な種の多いスズメガ類をざっととりあげてみよう。鶴ケ島産として知られるスズメガ類はコエビガラスズメ・モンホソバスズメ・トビイロスズメ・モモスズメ・ウンモンスズメ・ウチスズメ・ベニスズメ・セスジスズメ・キイロスズメ・ホシヒメホウジャク・ホシホウジャク・オオスカシバの一二種であるが、その中に比較的珍しいコエビガラスズメが含まれている。
 コエビガラスズメは従来珍稀種の一つに数えられていたが、近年市街地への進出が目立ち、幼虫が生垣や庭木として植栽されるイヌツゲを食うことから、そうした植栽木との関係が論じられている。鶴ケ島では一九七〇年九月一七日、自宅のヤマツツジで幼虫を発見したのが最初で、その後一九八一年八月一九日、やはり自宅の庭で、今度は交尾中の雌雄を発見することができた。本種の幼虫がヤマツツジを食うことは従来知られておらず、この時の発見が最初である。

コエビガラスズメ 珍しいスズメガの一つ.写真は,脚折町2丁目で採集されたもの(1981.8.19)

 昼行性のガにはヒゲナガガの一種、マドガ・ホタルガ・シロシタホタルガ・ミノウスバ・カノコガ・オオスカシバなどいろいろ見られるが、山地に多いキンモンガも確認された。幼虫の餌が鶴ケ島にも多いリョウブであるため、本種が町内に分布しても不思議はないが、ふだん山地で見かけることの多い種類であるため珍しく感じる。黒と黄のまだら模様の美しいガである。鶴ケ島では、一九七八年六月一一日、長久保の雑木林で採集したが、区画整理後はまったく見られなくなった。おそらく脚折地区からは絶滅したのであろう。
 雷電池の林で発見したチャイロカドモンヨトウも関東地方では発見例の少ない種類である。春出現し、夏は洞窟の壁面などで休眠したり、山地に移動したりする習性が知られているが、雷電では倒木の樹皮下に潜伏している個体が発見された。新知見であろう。
 帰化昆虫の一つであり、クワなどの大害虫になっているアメリカシロヒトリは、いつ鶴ケ島に侵入したか明らかになしえなかったが、今では町内全域で見られる。発生回数は年二回とされるが、秋、三回目の幼虫が発生することも稀でない。一化の成虫は四月下旬から五月上旬に現れるが、その年の気温などでばらつきを生じる。最近五年間の初認記録を示しておこう。(一九八二年)四月二五日、(一九八三年)四月二八日、(一九八四年)五月四日、(一九八五年)五月四日、(一九八六年)四月二六日。

チャイロカドモンヨトウ 珍しいガの1種 雷電池の森で,朽木の樹皮下から採集された.