鶴ケ島のトンボについては中間報告の形で『鶴ケ島研究』にまとめておいたが、昨年(一九八六)太田ケ谷沼の調査で新たに五種が加わり、既知種の合計は二一種になった。内訳はキイトトンボ・アジアイトトンボ・クロイトトンボ・オツネントンボ・オオアオイトトンボ・ハグロトンボ・ウチワヤンマ・ネアカヨシヤンマ・カトリヤンマ・ギンヤンマ・オニヤンマ・タカネトンボ・ハラビロトンボ・シオカラトンボ・オオシオカラトンボ・コフキトンボ・ミヤマアカネ・アキアカネ・マユタテアカネ・コシアキトンボ・ウスバキトンボである。太田ケ谷沼は人工的ではあるが、沼内にヨシの群落などもあり、トンボの種類はかなり豊富である。逆木の池や池尻池・雷電池などとはかなり違った印象をうける。特にウチワヤンマの多いことは注目される。また、太田ケ谷沼の南東三五〇メートルの林縁で、一九八六年八月一二日、乱舞する十数匹のネアカヨシヤンマを発見、その一頭を採集した。ネアカヨシヤンマは、かつては本邦各地に産地があったようであるが、最近では非常に少なく、幻のヤンマとさえいわれている。埼玉県では昭和二十年代、川越市新河岸での採集記録と一九七九年熊谷、一九八一年行田で、それぞれ一頭ずつ偶産的な採集・目撃記録が残されているだけである。太田ケ谷での今回の記録は、採餌のため、発生地から移動した個体と考えられるが、その発生地は採集地点に近い太田ケ谷沼である可能性が大きい。いずれ詳細な調査を試みるつもりでいる。
太田ケ谷沼 ウチワヤンマをはじめギンヤンマ,コシアキトンボ,コフキトンボ,クロイトトンボ,オツネントンボなどトンボの種類が多い.