1 真正クモ類

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 クモ類については、やはり筆者が調査を進めているが、まだ雷電の報告書の中で五二種記録しただけである。しかし、今までに確認している種類は一五〇種以上に達しており、さらに調査の度に増加するので、総種類数はいずれ二〇〇種を越えるのではないかと考えられる。これらの中で重要な種類は既知産地の少ないヨツコブヒメグモとスズキコモリグモであろう。
 ヨツコブヒメグモは微小なクモであるが、特異な形状と稀少性で注目される。鶴ケ島では雷電池の森で筆者により一頭が採集されている。スズキコモリグモは地表性の大型コモリグモで、色彩の鮮やかな点、日本産コモリグモ中の雄である。北海道・本州・九州に分布しているが採集記録は極めて少なく、旭川・埼玉・東京・山梨・長野・静岡・愛知・大分などに点在しているにすぎない。鶴ケ島では一九六七年一〇月一五日、長久保地区で一頭を筆者が採集している。ハンノキの根際で偶然発見したものである。筆者にとっては初めてのクモであったが、見た瞬間、スズキコモリグモだとわかった。それほど、このクモの特徴は明瞭である。採集地は台地の北端と飯盛川低地との接する地点で、そこからは鶴ケ島の松が遠望できた。この採集地にはその後も何回か足を運んだ。ヤナギの下のドジョウならぬ、ハンノキの下のクモを探すためである。しかしスズキコモリグモは二度とふたたび筆者の前に姿を現わさなかった。やはりよほどの珍稀種なのであろう。そしてそれから数年後、この地は関越自動車道のインターチェンジの下敷になった。今、その近くに行ってみても、もはや当時をしのぶ何ものもそこには残っていない。

スズキコモリグモ 全国的に稀なクモで,今までに記録された産地は10数か所にすぎない.写真は鶴ケ島産