第一節 人類の誕生

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 人類の祖先が、地球上に初めて姿を現わしたのは、今から約一七五万年前頃のことである。一九六〇年に東アフリカ、ケニアのオルドヴァイ渓谷で発見され、ホモ・エレクトゥス・ハビリスと名付けられた人類の祖先は、既に石を打ち欠いて作った原始的な石器を作り、これを用いて動物を狩ったり、毛皮を剥いでいたという。
 東アジアでは、現在までのところ、中国陝西省の黄土地帯で一九六三年に発見された藍田原人が最も古く、約七〇万年前頃とされている。藍田原人も礫を加工した原始的な石器を作り、火も利用していたらしい。藍田原人の骨と一緒に、現在では絶滅した剣歯虎、剣歯象、中国獏、野猪、毛冠鹿、斑鹿、三門(サンメン)馬、野牛、カモシカなどの化石骨が発見されており、これらの獣を追いながら生活していたと考えられている。
 ホモ・エレクトウス・ハビリスや藍田原人に続いて、ピテカントロプス・エレクトゥス(直立原人・インドネシア)、ハイデルベルグ人(ドイツ)、北京原人(中国)、ソロ人(インドネシア)と呼ばれる原人が現われた。これらの原人たちが活動した時代は下部洪積世から中部洪積世に属し、地球上には氷河期と間氷期とが交互に繰り返されていた。ホモ・ハビリスや原人が作ったハンドアックス(握斧)やチョッパー型石器は、石に直接打撃を与えて形を整える直接打法で作られた打製石器であり、前期旧石器と呼ばれている。
 ホモ・ハビリスや原人に対して、現生人類の直接の祖先であり、「賢いヒト」という意味で、ホモ・サピエンスと呼ばれるのが旧人と新人である。旧人にはネアンデルタール人(ドイツ)、新人にはクロマニヨン人(フランス)があり、北京周口店山頂洞で発見された山頂洞人も新人に属する。日本では愛知県豊橋市牛川町発見の牛川人がネアンデルタール人に近い骨格的様相を示すといわれている。
 ホモ・サピエンスのうち、新人は地球を襲った最後の氷河期であるウルム氷河期に出現したと言われる。今から約三万年前頃である。この時期、人類は旧大陸だけでなく、南北アメリカ大陸やオーストラリア大陸にまで拡散している。日本列島で人類が盛んに活動を始め、全国各地で遺跡が発見されるのもこの時期以降である。洪積世末期に活躍したホモ・サピエンスも打製石器を残している。これは後期旧石器と呼ばれ、それ以前の前期旧石器とは区別されている。
 旧石器時代の人類は小規模な血縁集団を形成し、洞窟や岩陰などに住みながら、狩猟、漁撈、植物の採集などによって生活していたと考えられている。唯一の利器としては石器しか持たなかったが、精神文化は相応に発達しており、ヴイーナスと呼ばれる地母神像(女性的な豊穣のシンボル)を作ったり、みごとな絵画を残している。