第二章 縄文時代

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 紀元前一万年から、一万一千年前に始まる縄文時代は、旧石器時代からの道具である石器に加えて、土器の製作と使用が始まり、木器や骨角器も出現して狩猟、漁撈、植物採集社会としては格段に進化した時代である。とりわけ土器の出現が縄文社会に与えた影響ははかりがたく、人々の生活様式に密着しながら、絢爛たる土器文化が展開された。
 土器は人類が初めて化学変化を利用した発明とされる。土をこね、形を作り、焼き上げただけのものとはいえ、土器は容器として利用できるだけでなく、煮炊き用の道具としてその本領が発揮できる。煮炊することができるようになったことによって、それまで生では食用になりにくかった食料、特に植物性食料の範囲が大きく広がった。アク抜きの技法も水を貯蔵できる容器としての土器の存在を無視することができず、これによって、食生活に余裕と幅がもたらされたことは重要である。
 縄文時代の開始とともに石器にも変化が現われた。旧石器時代に流行した細石刃は姿を消し、大型局部磨製石斧、石槍、石鏃、有舌(ゆうぜつ)尖頭器、矢柄(やがら)研磨器が新たな形式の石器として登場する。矢柄研磨器は矢柄を一直線に加工するための砥石で、縄文時代における弓矢の発明と発達に欠かせない重要な道具である。
 前後約一万年間に及ぶ縄文時代は、草創期、早期、前期、中期、後期、晩期の六期に区分される。放射性炭素C14年代測定法によって各期の開始年代の一端がほぼ明らかにされている。例示すれば、草創期が紀元前約一万年、早期が紀元前約七千年、前期が紀元前約四千年、中期が紀元前約三千年、後期が紀元前約二千年、晩期が紀元前約一千年である。

図2-3 鶴ケ島町内遺跡分布図(縄文時代)