土器は人類が初めて化学変化を利用した発明とされる。土をこね、形を作り、焼き上げただけのものとはいえ、土器は容器として利用できるだけでなく、煮炊き用の道具としてその本領が発揮できる。煮炊することができるようになったことによって、それまで生では食用になりにくかった食料、特に植物性食料の範囲が大きく広がった。アク抜きの技法も水を貯蔵できる容器としての土器の存在を無視することができず、これによって、食生活に余裕と幅がもたらされたことは重要である。
縄文時代の開始とともに石器にも変化が現われた。旧石器時代に流行した細石刃は姿を消し、大型局部磨製石斧、石槍、石鏃、有舌(ゆうぜつ)尖頭器、矢柄(やがら)研磨器が新たな形式の石器として登場する。矢柄研磨器は矢柄を一直線に加工するための砥石で、縄文時代における弓矢の発明と発達に欠かせない重要な道具である。
前後約一万年間に及ぶ縄文時代は、草創期、早期、前期、中期、後期、晩期の六期に区分される。放射性炭素C14年代測定法によって各期の開始年代の一端がほぼ明らかにされている。例示すれば、草創期が紀元前約一万年、早期が紀元前約七千年、前期が紀元前約四千年、中期が紀元前約三千年、後期が紀元前約二千年、晩期が紀元前約一千年である。
図2-3 鶴ケ島町内遺跡分布図(縄文時代)