3 主尊(本尊)

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 板碑には、主要な位置(塔身の上部)に必ず主尊が刻まれている。主尊は、一般的には種子であらわされることが多い。先述のごとくこの種子は主に真言宗などの密教で使用されるものである。梵字ではなく、仏像を陽刻(浮き彫り)や陰刻(くぼませて彫る)で表現する場合もあり、あるいは、名号(みょうごう)(南無阿弥陀仏)や題目(だいもく)(南無妙法蓮華経)を刻む場合もある。
 一方、あらわされる仏・菩薩としては、阿弥陀・大日・薬師・釈迦の各如来、地蔵菩薩・不動明王などがあり、また、阿弥陀如来に観音・勢至(せいし)両菩薩を挟侍(きょうじ)(仏の左右に侍す)としてまつる「阿弥陀三尊」もある。時代が下るに従って、民間信仰的な十仏・十三仏・二十一仏などもあらわれてくる。
 これらの諸仏の比率をみると、県下で主尊の確認できる一五、四一二基のうち、一番多いのは阿弥陀仏である。一三、七六九基を数え、全体の八九・四パーセントを占める。次いで釈迦(二・九%)・大日(二・八%)・名号(一・六%)・題目(一・三%)の順である。他に薬師・地蔵・不動が少数ながら存在する。
 町内では、県の統計と同様に阿弥陀仏が圧倒に多い。主尊の判明する七七基のうち、阿弥陀仏は六八基であり、全体の八八パーセントを占めている。他に大日四基(五%)・釈迦三基(四%)・題目・十三仏が各一基ずつである。この統計をみても、阿弥陀仏は板碑を代表する主尊である。