分付主である六人の侍は、彼らが中世以来保有してきた土地の保有権を全く失ったわけではなく、上級所有権のような権利を保持していた。そして、分付百姓は分付地において、ある程度の権利を公認されたが、その代りに分付主へ夫役を提供したから、分付主はその夫役に依存して、在来の手作経営を維持することができた。
その上に、彼らの村内での土豪的勢力が強固であり、伝統的な農村支配がなお持続するのを利用して、領主にとって緊急かつ不可欠な年貢・夫役を納める責任者となった。こうして、在来の土豪たる六人の侍は、中世以来の身分関係を徳川時代にも持ち越すことができたのである。