水帳(検地帳)は、土地の一筆ごとに、土地を基準にして名請人が登録されている。それで領主が村を単位として年貢を徴集するには便利であるが、個人別にその保有耕地をまとめていないために、村役人が村を単位として賦課された年貢を、農民一人ひとりに割り当てるには非常に困難である。これに反して名寄帳は、村請制(※註1)に基づき、名請人を基準として、それぞれの農民のもっている土地を、一まとめにして作った帳簿であるから、年貢賦課のためには便利である。例えば、村高五〇〇石の村に、三〇〇石の年貢を命じられた場合、名寄帳に従って、一〇石保持の農民には六石、五石保持のものには三石というように、簡単に年貢を割り当ててゆく。