近世後期になると、小農自立が達成し、身分の区別による村落構成は解体して、農民の階層は石高保有の多少によって構成されるようになった。その階層は保有地の広狭にもとづく経営内容の差として現われる。
①上層農は、手作経営の規模を越えて耕地を保有する地主層である。ここでいう手作経営とは小農の放出した年季奉公人を雇用する地主手作経営であり、その多くは、村落支配と結びついて、質地の集積を行う村役人層である。脚折村では文化・文政期に三町以上の耕地をもつ五人がこれに当る。
②中農層は、小農経営の単純再生産にふさわしい規模の耕地をもつ階層である。脚折の一町から三町未満までの耕地をもつ二一人である。
③下層農は、自分の耕地では足りず、その不分足を質地小作で補充し、それによって単婚小家族での経営で再生産を維持している階層である。
④最下層には、耕地をもたない水呑層がおり質地小作によって、辛うじてその再生産を維持している。高倉村の二名がこれに当たるが、脚折村では五反未満の耕地保有者も水呑に入れている(※註1)。