典型的な小農経営を営み、村の中堅ともいえる階層である。一町前後の経営規模をもつのが普通だが、畑作中心の当町内では、先にあげた二一人中、二町未満~一町以上の耕地を保有する一六人が典型的な中農層といえる。中農層とは、「単婚小家族による家族協業の枠(わく)内で、家族労働を最大限に活用し、零細錯圃(さくほ)形態をとる耕地に、多量の労働と多量の肥料を投入し、小農具を駆使して、周密な肥培管理をおこない、園芸的な集約農業を発展させる(※註4)」小農農法を実行する農家のことである。これは正に江戸後期における典型的な農法である。その特徴をあげると次のようになる。
① 単婚小家族にもとづく家族協業。
② 鍬に代表される小農具を使用する。
③ 零細錯圃(さくほ)形態をとる耕地を保有する。つまり、小さい耕地が入り交って存在する。
④ 生産物は販売を目的としないで、自給自足が支配的である。しかし、非自給な物資の入手のために交換価値を生産することもあり得る。