年季奉公人

337 ~ 337
年切奉公・出替奉公ともいう。幕末になると奉公人の代表的地位を占めていた。年季奉公には二つの種類がある。一つは一季奉公で一年限りの奉公であり、他の一つは多年季奉公で二年ないし三年ぐらい勤める奉公である。
 年季奉公の内容は、先掲の奉公請状に詳しいが、そこには、奉公人の義務の他に、雇主の義務が併記してある。御仕着(しきせ)として、夏は単物一つ、冬は袷一つを給与することである。貧窮な家庭に育った奉公人としては、「食わせて、着せてもらう」ことは、雇主の義務というよりも、雇主に対する切実な哀願であったのである。他に給与としては、わらじがけ一足を与えられた例が、上広谷村の請状にある。
 
   〔註〕
  (1) 大石久敬『地方凡例録』
  (2) 地租を初め、一切の諸税・諸経費を小作人が負担する小作慣行
  (3) 北島正元『農村社会史』
  (4) 古島敏雄『日本農業史』
  (5) 石井良助『日本法制史概説』