第一節 本途物成と小物成

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 田や畑の耕地の生産にかける租税を本途物成(ほんとものなり)という。本年貢という意味である。田の年貢は米で納めた。畑の本年貢は初めから金納であった。田畑半々位のところでは、田の年貢を重くし、畑の年貢を軽くして、畑の生産物を農民の主要な取分にするのが、この時代の常道であった。「米は領主のもの、雑穀は農民のもの」というのが、この時代の原則の一つであった。それで農民は「百姓夫食(ぶじき)(食料)の儀、芋・菜・大根・粟・稗・麦、これを食い申し候」「脚折村明細帳」という状態であった。麦・粟・稗などは現物で納めず、貨幣で納めるのだから、これらを貨幣に代えることは、農民にとって大きな苦痛であった。
 本途物成の他に、小物成(こものなり)という年貢もあった。これは山野河海の使用や、その地方の特産物に課されたものである。農民が刈敷肥料に必要な草を入会野から取る場合には野年貢が取られた。当地方の特産物としては
 高倉村 荏(えごま)・大豆・菜種・餅米
 藤金村 荏・藁・松飾り
 上広谷村 荏・大豆
 五味ケ谷村 荏
 上新田村 荏・大豆
 通新田村 荏・大豆
 脚折村 餅米・秣・松飾、後には一括して小物成として銭納。
  小物成を現物で納めさせることは、時代と共に無くなり、貨幣で代納させることが一般的になった。