次は、一般旅行者の事件である。
触れ人馬等が途中で相煩らい候節は、村方より助け人馬を差出し候。当村の義は、八王子より日光への往還付きの村方にて、相州・甲州等より上州蚕場等へ日雇稼ぎに参り候もの、先方または途中にて病気づき、国許(もと)へ郷(ごう)送りにて継ぎ送り候儀、日々のようにこれあり、殊に、当村地内は南北八丁に御座候えども、外に南へ出候並木のうち十丁も御座候ところ、左右両側は林畑にて、高倉新田に御座候。並木と道路は当村が進退まかりあり候ゆえ、時々、行倒れ死人または病人等が出来候節は、村方で介抱(かいほう)いたし、また死人これある節は、御訴え申し上げ、御見分(けんぶん)を請け候義これあり。この義、隣村にては郷村送り物等もこれなく、または行倒れ死失(うせ)人等もこれなく、当村の義は右の次第にて難渋仕り候。