脚折村の代官は、天正一八年(一五九〇)に伊奈備前守忠次が支配を始めてから、文久元年(一八六一)御料が旗本新見伊勢守の知行地になるまでの二七一年間に二二代を数えている。任期は二代目の伊奈忠治の二一年を最高として三代目石川伝兵衛が一八年としこれに次ぎ、最も短かいのは幕末の江川太郎左衛門の三か月である。平均すると四年二か月である。
新たに代官を拝命するときは、支配高は五万石の御料である。順次に支配高は増加するが、そのときは「場所替」と称して、六万石ないし七、八万石の御料へ移任することが多い。「場所替」は、代官の治績の優劣によって区別をつけられる。また、在任の期間も三、四年のものもあれば、一〇年内外に及ぶものもある。「皆、上司の監察によるところなり」(安藤博『徳川幕府県治要略』)。
代官は、幕府農政の最前線にあって、直接に農民と接触する機会が多いから、支配の良し悪しは農民の生活に深刻な影響を与え、生殺与奪の権力を握っていた。そのため、代官あるいは下役人の苛政や違法行為に苦しんだ百姓たちが立ち上って、一揆を起した件数は、五三件にも及んでいる。
職名 | 人名 | 就任 | 離任 | 備考 |
代官 | 伊奈備前守 忠次 | 天正18年 | | 徳川氏関東総領の時村高398石 |
大名 | 松平(川越藩)家 | 寛永16年 | 元禄7年 | 慶安元年検地 |
代官 | 伊奈半十郎(忠治) | 元禄8年 | 享保元年 | |
同 | 石川伝兵衛 | 享保2年 | 享保20年頃 | |
| | 同人支配中,村高480石余のところ,享保6年正月,分郷の上,高240石余を旗本坪内能登守へ知行渡し分与す。同年より慶応3年迄引続き,坪内家代々これを知行す。 |
代官 | 大谷杢之助 | 元文元年 | 寛保3年 | |
同 | 伊奈半左衛門忠勝 | 延宝元年 | | |
同 | 岡本善右衛門 | 延宝2年 | | |
同 | 伊奈半左衛門忠達 | 延宝3年 | | |
同 | 大貫孫兵衛 | 延宝4年 | | 立会い支配 |
上山新左衛門 |
同 | 岡本善右衛門 | 寛延元年 | 宝暦3年 | |
同 | 田中平蔵 | 宝暦8年 | | |
同 | (不詳) | 宝暦9年 | 宝暦13年 | |
同 | 松下平左衛門 | 明和元年 | 明和3年 | |
三卿 | 田安(中納言)家 | 明和4年 | 天保3年 | |
代官 | 伊奈半左衛門 | 天保3年4月 | | |
同 | 山本大膳 | 天保12年 | | |
同 | 関保右衛門 | 天保13年 | | |
同 | 大熊善太郎 | 天保13年12月 | 嘉永2年10月 | |
| | | 但し,同人支配中,天保14年11月,分郷に相成り,村高139石余のところ高90石余を旧旗本金田真之助へ分与相成り,以後,明治3年迄,金田家代々これを知行す。残高48石余が代官支配に残る。 |
同 | 江川太郎左衛門 | 嘉永2年11月 | 安政3年正月 | |
同 | 林部善太左衛門 | 安政3年2月 | 安政4年8月 | |
同 | 江川太郎左衛門 | 安政4年9月 | 安政4年11月 | |
同 | 川上金吾助 | 安政4年12月 | 安政6年3月 | |
同 | 江川太郎左衛門 | 安政6年4月 | 文久元年10月 | |
旗本 | 新見伊勢守 | 文久元年11月 | 慶応3年 | 48石余知行 |
| 品川県 | 明治元年 | 明治2年7月 | |
| 韮山県 | 明治2年8月 | 明治4年12月 | |
| 入間県 | 明治5年正月 | 明治6年5月 | |
| 熊谷県 | 明治6年6月 | | |
表4-66 御料を中心とする脚折新田・下新田村新田支配者 |
職名 | 人名 | 就任 | 離任 | 備考 |
代官 | 上坂安左衛門 | 天正18年 | 寛保3年 | 脚折村外九か村入会秣場 |
新田世話役 | 川崎平右衛門定孝 | 元文4年 | | |
代官 | 同人 | 寛保3年 | 寛延2年(1749) | 美濃代官に転任 |
(下役) | 矢島藤助 | 寛保3年 | 寛延2年 | 三角原陣屋で北武蔵野新田を支配する |
代官 | 伊奈半左衛門忠宥(おき) | 宝暦3年 | 寛政3年 | |
同 | 管半十郎 | 寛政4年 | 寛政5年 | 他4人立会い |
同 | 伊奈友之助忠富 | 寛政5年 | 文化5年頃 | |
同 | 小野田三郎右衛門 | 文政4年 | | |
同 | 川崎平右衛門孝保 | 文政5年 | 文政6年 | 四代目の平右衛門である |
同 | 伊奈半左衛門 | 文政7年 | 天保12年6月 | |
同 | 山本大膳 | 天保12年7月 | 天保13年8月 | 天保12年検地高入,同13年同断 |
同 | 関保右衛門 | 天保13年9月 | 天保13年11月 | |
同 | 大熊善太郎 | 天保13年12月 | 嘉永2年11月 | |
同 | 江川太郎左衛門 | 嘉永2年12月 | 安政3年正月 | |
同 | 林部善太左衛門 | 安政3年2月 | 安政3年8月 | |
同 | 江川太郎左衛門 | 安政3年9月 | 安政3年12月 | |
同 | 川上金吾助 | 安政5年正月 | 安政6年3月 | |
同 | 江川太郎左衛門 | 安政6年4月 | 文久3年正月 | |
同 | 佐々井半十郎 | 文久3年2月 | 文久3年10月 | |
同 | 松村忠四郎 | 文久3年11月 | 文久4年9月 | |
同 | 今川要作 | 文久4年10月 | 慶応元年閏5月 | |
同 | 松村忠四郎 | 慶応元年6月 | 慶応3年 | |
| 品川県 | 明治元年 | 明治2年7月 | |
| 韮山県 | 明治2年8月 | 明治4年12月 | |
| 入間県 | 明治5年正月 | 明治6年5月 | |
| 熊谷県 | 明治6年6日 | | |
| 脚折村 | 明治8年4月8日 | | 脚折村へ合併 |