布達の徹底・戸籍の整備・租税の徴収・小学校の設置・就学の勧奨・徴兵調査などの国家行政事務であり、中央政府の法令の徹底と、政策の浸透が主要な職務であった。これらの職務のうち、最も重要なのは租税の徴収で、期限に遅れないよう特に注意がはらわれた。また、小学校の設置と就学奨励も、国民教化(政府の富国強兵政策に進んで協力する国民の養成)を目的とするから、目標を至急達成するよう強制された。しかし、学校教育は、校舎建設・維持費、教師の給料などがすべて地元の町村民の負担であり、徴兵・地租改正とならんで、農民にとって重荷であったために、その実現は容易なことではなかった。
区戸長の身分や任命方法、職務内容をみると、区戸長は明らかに新政府の役人であった。廃藩置県の目標が、封建的割拠勢力の打破、中央集権国家の完成にあったのと同じように、大小区制も、中央に集中された権力の統治を効果的に地方に滲透させるため、新しい行政区域と行政担当者を作り出すことが目標であった。区戸長の官選、その官僚化は、成立まもない新しい権力にとって、忠実な官僚の手で統治を確実に行うための不可欠な制度であった。