地券

530 ~ 531
地券とは、明治初年に明治政府の発行した土地所有の証明書である。
 江戸時代には、多くの都市では地子(ちし)(地租)免除の特典があったので、租税の負担を公平にするため、明治四年一二月、東京府下の市街地に地券を発行して、地租を徴収することにした。それを他の都市にも拡大して、同五年七月には一般地にも交付することにした。これが壬申(じんしん)地券といわれるもので、この地券で土地所有権の法的な保障をすることにした。
 次いで、明治六年七月、地租改正に伴い、新しく改正地券を発行して、壬申地券と引換えに交付することになった。
 改正地券には、土地所在の村・字(あざ)と地番、地目、反別、持主、地価、地租額(百分の三、明治一〇年以降は百分の二・五も併記)が記載されている。
 
 地券発行は、明治五年三月二二日(旧暦二月一五日)の太政官布告の「土地所有の自由」に由来するものである。「地所、永代売買ノ儀、従来禁制ノトコロ、自今、四民共売買所持致シ候儀、差許サレ候事」という布告であるが、このなかで、「四民共、売買所持致シ」というのは、四民、すなわち、士農工商の身分差による所有の制限を廃止したということである。何人も土地を所持し、また売買する自由のあることを宣言し、土地所有について、身分上の制限をしないことを明らかにしたものである。
 (1)土地所有は四民同一である。
 (2)土地の売買は、当事者が勝手に行なってもよい。
 この布告によって、幕府時代の土地に対する制限はすべて廃止され、土地は売買流通し、借金の担保ともなり得ることになった。
 しかし、土地自由所持、売買・担保公許を実現するには、これを保証する方法として、地券という証明書が必要である。
 そこで、地券が発行されたわけである。地券発行の目的は、先述のように、地主の所有権を政府が確認することにあるのだが、また、地価を定めて、地租を賦課するための標準とすることでもあった。しかし、壬申地券は「売買価格」すなわち、現在そのままの土地売買による流通価格を券面に記載して、課税するのに対し、改正地券は、「収益価格」すなわち地押丈量により、正確な面積を把握し、各土地の具体的生産性に基いて、地価を算定し、これを課税の基礎とした。
 (裏面)
日本帝国ノ人民、土地ヲ所有スルモノハ、必ラズ此券状ヲ有スヘシ。
日本帝国外ノ人民ハ、此土地ヲ所有スルノ権利ナキ者トス。故ニ、何等ノ事由アルトモ、日本政府ハ地主即チ名前人ノ所有ト認ムヘシ。
日本人民ノ此券状ヲ有スルモノハ、其土地ヲ適意ニ所用シ、又ハ土地ヲ所有シ得ヘキ権利アル者ニ、売買・譲渡・質入・書入スル事ヲ得ヘシ。
売買・譲渡・質入・書入等ヲナサントスルモノハ、渾(スベ)テ其規則ヲ遵守スヘシ。若シ其規則ニ因ラスシテ此券状ヲ有スルトモ、其権利ヲ得サルモノトス。
 
       表書ノ地所自今右記名者ノ所有タルヲ確認ス
                    主事
           年  月  日