戸長の役割

551 ~ 552
「行政事務ニ従事スルト、其ノ町村ノ理事者タルト、二様ノ性質ノ者」であった。行政事務とは、布告・布達の徹底、徴税、戸籍取り調べ、徴兵、地券台帳整備、就学勧誘など国家行政事務のことであり、今までの区長・戸長と同じように、戸長のはたす重要な職務であった。「府知事・県令、又ハ、郡区長ヨリ命ズル所ノ事務ハ、規則又ハ命令ニヨツテ従事スベキ事」と命じられていた。この役割を忠実に遂行するよう厳重な監督を受け、その過失は官吏懲戒令によって罰せられた。また、明治一三年には、警部のおかれていない地域の戸長は、犯罪捜査をする司法警察官の義務も課せられた。
 次に、町村の理事者としての戸長の性格は、町村の公共事務に関しては、自由な権限をもっており、郡長の命令も及ばないことである。町村の公共事業は、町村の請願、神仏祭典に関すること、小学校の設置、勧業、水利、衛生などであり、これらは、戸長が町村という公共団体の理事者として、自治的に処理することを許されていた。