表―17で見る支出予算の戸長役場費は、給与と庁費(備品購入費・需要費)が半々程度である。勧業費は年々増加しているが、そのほとんどが勧業委員の手当である。教育費が突然二〇年度に計上されているのは、小学校に対する文部省の補助金が打ち切られたためで、これは町村財政に対する重い負担となった。二〇年度には村費に対する比率は五三パーセントであり、二一年度でも四一パーセントを占めている。
表5-17 明治17年度~21年度 上広谷村連合村費予算表 |
支出 |
年度 | 明治17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
科目 |
戸長役場費 | 280円11銭5厘 | 289円70銭 | 301円55銭 | 268円 | 280円40銭 |
会議費 | 12円40銭 | 4円50銭 | 4円50銭 | 4円50銭 | 4円50銭 |
衛生費 | 55円80銭 | 34円92銭 | 50円 | 36円 | 34円90銭 |
救助費 | 11円 | 4円50銭 | 9円50銭 | 5円50銭 | 5円50銭 |
災害予防及警備費 | 12円80銭 | 7円80銭 | 7円80銭 | 3円 | 3円 |
勧業費 | 28円40銭 | 35円8銭 | 63円80銭 | 65円5銭 | 64円70銭 |
予備費 | | 5円 | | | |
教育補助費 | | | | 459円84銭2厘 | 282円50銭 |
総計 | 400円51銭5厘 | 381円50銭 | 437円15銭 | 841円89銭2厘 | 675円50銭 |
年度 | 明治17 | 18 | 19 | 20 | 21 |
科目 |
地価割 | 400円51銭5厘 | 480円41銭 | 255円36銭6厘 | 585円82銭9厘 | 454円79銭4厘 |
戸別割 | | | 63円84銭1厘 | 251円6銭9厘 | 151円59銭8厘 |
繰越金 | | | 117円94銭3厘 | 4円99銭4厘 | 69円10銭8厘 |
総計 | 400円51銭5厘 | 480円41銭 | 437円15銭 | 841円89銭2厘 | 675円50銭 |
(田中家1079より作成) |
〔備考〕この表は、埼玉県立文書館所蔵の田中家文書により作成したが、原案に対する修正の書きこみが、非常に多く正確な金額の算定は困難で、収支額も一致しない年度もある。 |
収入は、地価割一種目で課税してきたが、一九年度から戸別割という税目が増え、繰越金という項目が設けられている。これは、一八年八月の布告によって、土地に対する町村費は地租の七分の一を超過してはならぬと決められたからで、町村費は戸別割に重くかけられるようになり、下層農民の負担を重くする結果となった。しかし、戸別割の賦課は、全戸均等ではなく、村民各自の資力を標準とする割当方法であった。
(付言)
この頃、上広谷村と五味ケ谷村との合併も計画されていた。元来、両村は下広谷村(現、川越市)と共に一村をなしていたが、慶安元年(一六四八)に三村に分かれ、以来、境界が相互に入り乱れていたので、明治九年(一八七六)、両村の境界を新たに整備し直すと共に、合併促進を計った。しかし、明治一二年、合併願は却下され、以来、明治一七年の上広谷連合戸長役場の設置までの間、両村は連合村として、「上広谷・五味ケ谷村連合戸長役場」を設置して、政務に当った。(「長峰家文書」)