新しい町村制は、数個の町村を包括した地域を町村の区域として成立した。十七年の改正では、江戸時代からの町村が村落共同体として依然残っており、複雑な行政内容をもつ国家機構の下部組織としての町村は、この実際の町村の実状にあわない過大な行政上の負担に適応するものでなければならなかったのである。
新町村制の主要な特徴は、町村を公法人としての性格をもつ自治団体とし、条例・規則の制定権、町村会議議員の公選制を規定し、町村長・助役は町村会によって推薦あるいは選任されるものとし、また、町村は政府―府県―郡―町村という官治的支配体制の末端として定置されることになり、内務大臣および上級監督官庁は、町村行政の主要な権限について、監督権あるいは裁可権を確保していた。また、町村会議員の選挙権・被選挙権は、地租もしくは直接国税二円以上の納入者に限定した。議員選挙の方法は、納税額によって差別する等級選挙制(市会議員は三級選挙制、町村会議員は二級選挙制)を採用して、市町村を名望家支配の体制として確立することに留意した。それは、町村長・助役・町村委員などを、原則的には名誉職として有資産者の就任を予定したこととともに、有力者中心の地方自治という、制定者の意図を実現したものである。
財政面でも、予算・決算制を採用して、一応、近代的公財政制度の形式を整えることになるが、同時に、広汎な国政委任事務を負担し、財政全般について上級官庁による強い監督・干渉が行われることになった。(宇野俊一「明治憲法体制の成立と展開」による)