農産物

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埼玉県の農業経営は地形上で四つの地帯に区分されている。
1 水田地帯
2 水田・畑作の半ばする地帯
3 畑作地帯
4 山間地帯
 鶴ケ島町は、広大な埼玉平野が西方に延びて、今や秩父山地に迫ろうとする位置にある。従ってこの地域は、西部台地とよばれ、細かく分類すると、西部台地のうちの坂戸・鶴ケ島台地とよばれる。
 台地上の農業経営だから、当然畑作地帯に属する。その農業生産物もこの自然条件を有効に利用して、大小麦・甘藷・馬鈴薯・大豆・小豆・疏菜など食用物を栽培している。その他、養蚕も盛んで、茶も狭山茶の一部として茶園も広い面積を占めている。
 次に、『武蔵国郡村誌』に記載する産物を表示する。『武蔵国郡村誌』は明治八、九年頃の記録であるが、明治になって日が浅く、農業経営も江戸末期をそのまま受けついだものと思われる。明治・大正・昭和と農業が発展してゆくスタート・ラインに立った農業の姿として興味深い。ただし、ここに表示した農産物は販売用でなく、自家消費用に生産されたものが大部分である。
表5-49 農産物一覧表 明治八~九年
種目糯米岡穂大麦小麦蕎麦大豆小豆
村名  単位
五味ケ谷101401004222
上広谷81201703530
戸宮95030581
大塚野新田2120.910.3
太田ケ谷6510143549141.539
藤金
三ツ木685100436
三ツ木新田
脚折147
上新田20
中新田4010550
下新田20161125920
高倉16256482601266210
町屋
6251019220649484337.918211.36
備考 
 
種目甘薯ダイコン鶏卵生糸生絹太織木綿
村名  単位貫目
五味ケ谷1,300
上広谷50500107
戸宮100.5
大塚野新田0.815080
太田ケ谷933310貫960目
藤金203564貫10201,550
三ツ木4801貫960目3
三ツ木新田
脚折3001501,30027019378771,5003,100
上新田1101509
中新田2501,250200310
下新田1633301,16020719355
高倉1,90030045020250
町屋14840100124斤20
貫 目
5137501107,5582438581,2475 92047283774,1353,180
備考貫と石とで表示
(備考)石以下は省略した
『武蔵国郡村誌』より作成

 次に、資料の関係で、大正元年の一覧表を示す。これには価格表を副えてある。時代が大正となれば、商品経済が純農村にも浸透した姿をうかがわせる。
表5-50 鶴ケ島農産物価格表
大正元年
種類収穫高(石)価格(円)
1,41630,019
糯米(もちごめ)1162,517
陸米78211,964
大麦3,80827,418
小麦1,97421,719
裸麦3612,889
大豆7909,331
小豆1124,962
豌豆(えんどう)22290
781,295
蕎麦208250
玉蜀黍(とうもろこし)27202
製茶2,8967,281
甘藷101,8708,150
ダイコン6,240624
馬鈴薯2,544102
青芋(さといも)9,6501,158
カブラ42042
ニンジン840109
葱(ねぎ)1,380383
牛蒡(ごぼう)1,728363
胡瓜(きゅうり)18022
茄子(なす)2,816225
しょうが549
蚕繭33,432103,118
「鶴ヶ島村郷土地誌」から作成