図書館

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明治四二年(一九〇九)、埼玉県は通俗巡回文庫を設置した。これは、勃興しつつあった青年団(青年会)活動と結び着いて地域に浸透し、後に各自治体に設置されることとなる図書館の前身となった。鶴ケ島では、明治四二年一二月、最初の通俗巡回文庫が到着、約ひと月の間閲覧が行なわれた。
 大正一二年(一九二三)一二月、東宮殿下御成婚記念として、鶴ケ島村立簡易図書館が鶴ケ島第一尋常小学校内に設立された。館長は同校校長が兼任した。こうして開設された図書館も、戦前はさしたる利用がなかったらしい。昭和初年代の図書館の利用状況は次表の通りであった。
表5-75 図書館利用状況
名称設立の区別創立年月年度図書冊数開館日数閲覧
和漢書写真帳絵画本洋書
鶴ケ島村立簡易図書館公立大正12年4月昭和3年六〇三三〇〇四〇〇
5七一二三〇〇四二五
7七三〇三〇〇三二五
8七六八三〇〇三二五
10六〇〇二六〇二六〇
『村勢要覧』(昭和3,5,7,8,10年)より

 戦前、県内で開設された市町村立の図書館は、二五三館に達した。しかしその大部分は、戦中から戦後にかけて活動を停止、乃至縮小を余儀なくされた。鶴ケ島の図書館のその間の活動状況は不明である。
 戦後、昭和二七年に村公民館が設置された際には、文化教養部の活動の一環として、鶴ケ島でも図書館活動が再開されている。戦前の図書は引き継がれなかったらしく、大衆小説を中心に実用書、純文学書等、昭和三〇年一二月までに四五六冊が購入された。寄贈図書を含めても、図書の量は貧弱なものであった。
 昭和二五年四月に公布された「図書館法」に基づき、四一年一二月、「鶴ケ島町立図書館設置条例」が公布された。それにより、前月建設された公民館内に設けられた図書館は、図書館となった。現在に直接つながる町の図書館活動の始まりである。
 その後、町の東部地域においても、鶴ケ丘どんぐり公園内に図書館分室が設置された。六〇年四月、南公民館が新築されると、同分室は南公民館内に鶴ケ島町立図書館南分室として新たに設置された。