71 路傍の菩薩

 町屋の家並の西端、駒寺道の南に江戸時代から石仏が立っている。長い間風雨に晒され損耗しているが、今から300年前の享保4年(1719)4月に建立されたもので、「奉供養地蔵菩薩」とある。その昔町屋村で建立されたものであろう。

 右手に錫丈(しゃくじょう)、左手に宝珠を持ち、町屋村の安全と繁栄を守ってきた。この菩薩は、古来より子供の夜泣きを癒したり風邪に効くと伝えられる。お金を半紙に包み御散供(おさんご)(半紙に入った米)と一緒に供えて祈願すると、夜泣きが止ったり風邪が癒ったと言う。御礼参りには頭布(ずきん)を菩薩にかけるのだと言われている。

 大正年代の縁日には、祭文語りや義太夫語り、万作踊り等をたのんで盛んであったそうである。

 この時代の菩薩は、頭布・たすき・よだれ掛け等色柄様々に着飾っていたと語り継がれている。

 この地蔵尊前の道は西南方に延びる古道で、下新田から中・上新田を経て駒寺野新田に入り飯能に向う旧飯能街道につながっている。また、近くを古道鎌倉街道が駒寺野新田に向かっている。