77 上広谷の野仏

 大字上広谷字上谷の古道(六尺道)の路傍に野仏が祀られている。

 高さ95cm(3尺1寸5分)石像の幅42cm(1尺3寸8分)あり、馬頭の下に仏顔が3つ並び、中央の手は合掌し、右手2本に剣と鎚(つち)を持ち、左手に数珠、輪宝を持っている。向って右側面には「奉建立・馬頭観世音菩薩・武州高麗郡上広谷村・五味ヶ谷村・中丸・講中」と記され、左側面には「明和四丁亥天二月吉日」とある。今から250余年前に建てられたものである。

 中丸・五味ヶ谷・上広谷講中の馬の病気平癒と安全を礼願してきた野仏であろう。古時より路傍に立って道祖神と同じ様に信仰されて来たのだろう。

 今でも5円・10円等の硬貨が数多く供えられているのを見る時、この馬頭観世音菩薩はむら人のあつい信仰をうけていた事が理解できる。

 ここから約200m位南にも緑泥片岩製の野仏が1基あったが、終戦後進駐軍のいたずらで機関銃の銃撃によって破砕され、それが馬頭観音であるという以上には識別を困難にしている。また坂戸~川越県道沿に地蔵尊が建立されていたと言うが、県道改良工事の時であろうか、里人の知らない間に消えたと言う。更にこの県道五味ヶ谷分にも道沿に地蔵尊が建立されていたが、やはり土地の人が知らない間に姿が消えたと言われる。

 この馬頭観世音菩薩は、五味ヶ谷にある馬頭尊とともに、鶴ヶ島市の東部区域にある代表的な野仏であり、民俗史上貴重な存在である。