獅子とは架空の神獣で、天竺より飛来したとされる。獅子舞は、獅子頭を被って舞踏する(以降は舞うと記す)芸能である。大きく分けると、伎楽、舞楽などの流れを汲む二人立ちの獅子と、一人立ちの獅子がある。
一人立ちの獅子舞は、主に関東以北に分布し、シシ踊りなどとも呼ばれる。被り物は獅子の他、鹿、龍、猪などを模したものがあり、三頭・六頭・八頭・一二頭などで一隊となる。三頭立ての獅子は特にササラ獅子とも呼ばれ、四人の花笠役がササラという楽器を持って舞に参加する。ササラ獅子も、山岳系か平野系かなど、いくつかの系統に分けることができる。
高倉の獅子舞は典型的なササラ獅子舞である。近世時代の中頃から行われていると伝えられるが、はっきりしたことは分かっていない。高倉の鎮守である日枝神社の秋の例大祭、つまりオクンチの日に、ムラ内の神仏に奉納され、またムラの家々を回って悪魔祓いをするのが、おおまかな内容である。つまり収穫感謝を中心とした神事芸能として位置づけることができるだろう。しかし同時に、収穫後の慰労休養と娯楽をも兼ねており、ムラ内はもちろん、周辺のムラの人々にとっても、高倉の獅子舞は楽しく待ち遠しい行事であった。
昭和三九年に高倉獅子舞保存会が結成され、昭和四九年には高倉の獅子舞は鶴ヶ島町で最初の文化財に指定された。高倉獅子舞保存会は、その功績によって昭和五四年に埼玉県より「文化ともしび賞」を受賞している。