高倉の獅子舞は、日枝神社の秋の例大祭であるオクンチの神事芸能であるため、日枝神社の氏子会が運営している(氏子一一〇人、役員五人)。運営にあたっては、年行事の仕事が特に大変である。年行事は当番制で、この獅子舞を含めた一切の行事について一年間世話役を勤める。
ササラッ子 ササラッ子は花笠ともいい、四人で一組を構成する。ササラッ子になるのは、原則としてムラで生まれた長男で、小学二、三年生ぐらいからその役に就く。今日では、次男以下でも、氏子であれば選出される。
新規加入のササラッ子には、初めの一、二年の間は夜の練習にも親が付き添う。ササラッ子は、ササラッ子だけを行う組と、それを三、四年経験して獅子の役を行うようになる組と、一組おきにある。獅子まで行う組のササラッ子はなり手が少ないという。
獅子 ササラッ子を経験した後、小学五、六年生ぐらいから、獅子の役を担当するようになる。獅子は、大獅子、中獅子、後獅子(前獅子、女獅子、後獅子ともいう)により構成され、またハイオイが一人加わる。舞はハイオイを含めて四人一組で行われる。誰が何をやるかはササラッ子同士で話し合って決める。獅子を担う前年あたりから、自分の獅子役又はハイオイ役の行動をじっくり見たり、獅子頭の手入れ等を行っている。ハイオイは顔が出るからあまり人気がなく、その組の中の学年が下の者が行うことが多いという。こうした組は、新しい組と後見役の古い組の二組がある。現在の組は、高校生の組と成人(二〇代前半)の組である。
後見役の獅子が引退すると、獅子役、ササラッ子役が繰り上がり、新たに小学生のササラッ子四人一組が加入する。
獅子を指導する立場を「親」と称するが、七年間獅子を舞うと「親」になれる。獅子役の若い人が出られない場合は、「親」の中から該当する役の人が代理で舞う。
お天狗様 一人。赤茶っぽい着物を着て、天狗の面、帽子を被り、木でできた槍のような物を持つ。これも男が担当するが、かつてはムコがやることが多かったという。身長の大きい人がやる。
万燈 一人。棒の先に「家内安全」「五穀豊穣」等と書いてある紙が張ってあって、その先に花の付いている万燈を持つ係。これも男がやる。現在万燈を持っている人は二〇年以上この役をしている。お天狗様や万燈係には特別な練習はない。
法螺貝 一人。合図のほら貝を吹く役である。
笛吹き 男数人。囃子の基本は笛である。親笛を中心に一二、三人で構成されている。誰がやってもよいが、獅子やハイオイを若い時にやって、その後笛の役に就く人が多い。二〇代後半から五〇代と、その構成年齢層は幅が広く、高年齢者は若い人に笛を教えたり、獅子の舞方に注意を与えたりしている。
歌うたい 四、五人で構成されている。お宮でうたう歌とお寺でうたう歌では昔は違っていたが、今日では同じ歌をうたっている。また昔は名主をたたえる歌もあった。歌うたいは難しいので、笛と両方を行うことはできず、歌に専念する。
道化 通称はオカメ。ヤエンボウ(=野猿坊)ともいう。オカメやヒョットコなどの面を被り、ボロになった古着などを着ている。今日では日枝神社拝殿の前で行う「竿がかり」の舞の最中に、ムラの自治会長や消防団員などが扮装して参入している。獅子やハイオイの仕種を真似したり、観衆をかまったり、役員や来賓にちょっかいを出したり、皆に酒を振る舞うなどする。昔は酒も貴重であったためあまり出されず、子供が面を被っておどけていたものであるという。