棚井上(たないかみ)遺跡

名称棚井上(たないかみ)遺跡
所在地宇部市大字棚井
時代室町時代
遺構掘立柱建物、土壙、溝、水路、井戸
遺物土師器、瓦質土器、国産陶器、貿易陶磁器、滑石製石鍋、砥石、鉄鍬先、鉄釘、鉄刀子、ふいごの羽口、鉱滓、瓦、仏像、数珠
特徴

棚井上遺跡は、厚東川の右岸にある河岸段丘上に営まれた中世の集落遺跡です。1993年に宇部市教育委員会によって調査され、掘立柱建物跡などの中世の人々が暮らした痕跡が確認されました。出土遺物から、室町時代を中心に営まれた集落と考えられています。

棚井上遺跡では、土師器の坏や皿、瓦質土器の鍋やすり鉢など、生活に用いられたものがたくさん出土しました。中には、鉄鍬先、鉄釘など日常に使われる鉄製品とともに、ふいごの羽口や砥石が出土しており、この集落で鍛冶も行われていたことを示しています。

棚井地区は、鎌倉時代から南北朝時代を中心に活躍した厚東氏の本拠地です。遺跡の西側には厚東氏が建立した東隆寺があり、厚東氏が滅んだ後も大内氏のもとで繁栄していたとされています。厚東氏や東隆寺との直接的な関連は確かではありませんが、棚井上遺跡からはミニチュアの仏像、灯明皿、「妙秀禅尼 妙通禅尼 浄□・・」と書かれた墨書土器、瓦など、寺院との関連がうかがわれるものが出土しています。仏像は高さ4.1㎝の聖観音菩薩立像で、宇部市でも珍しい出土品です。

棚井上遺跡 土師器
土師器
棚井上遺跡 墨書土器
墨書土器
棚井上遺跡 聖観音菩薩立像
聖観音菩薩立像
現状水田
参考文献
  • 『棚井上遺跡』(宇部市教育委員会、1993)