宇部市教育委員会/宇部市デジタルミュージアム

慶長国絵図の世界

国絵図は江戸幕府が国内情勢の把握のため、各国大名に作らせた国単位の大型彩色絵図で、慶長の他に正保・元禄・天保時代にも作成されました。毛利藩の担当者は家老の福原広俊で、この2枚は慶長10年(1605年)頃に作製、幕府に提出された正図の控図です。既に国内に正図はなく、絵図の裏書きから、現存する9カ国の慶長国絵図の中で正当な控図と確認できる唯―のものです。郡境は紫、道は赤、河川が青で表され、萩城など4つの城や、郡高や郡名、村高や郷村名なども表示されています。現存する最古の山口県全域を表す地図として、また江戸時代初期の交通、経済、地勢が一覧できるものとして極めて貴重な歴史地理資料です。

慶長国絵図とは、江戸時代の初期に徳川幕府が各地の諸大名に命じて各国ごとに提出させた大型絵地図です。これまでこの絵図が大型絵画であるため、絵の細部まで鑑賞する機会は多くはありませんでした。ここではデジタル化した慶長国絵図をズームアップして見ることにより、絵画としての魅力を感じたり、当時の山口県(長門国・周防国)や宇部地域の地理的特色に注目することができます。地図を活用してふるさとの再発見をしてみませんか。

慶長国絵図控図長門国(けいちょうくにえずひかえずながとこく)

萩藩の西部にあたる長門国は萩藩39万石の内13万石余りを有する国と記載されています。長門国は厚狭郡・豊浦郡・美祢郡・大津郡・阿武郡・見島からなり、国中を流れる厚東川、阿武川などの河川が描かれており、萩に城が描かれています。宇部地域も長門国に入り、厚東川中流には二俣瀬地域の名前のルーツとなる二俣の厚東川と中州が描かれています。一定の紙面の中に無理やり地図面を押し込めたために、全体的に湾曲して描かれていて、宇部地域は位置的には分かりにくい表示になっています。

慶長国絵図控図周防国(けいちょうくにえずひかえずすおうこく)

萩藩の東部にあたる周防国は、萩藩39万石の内26万石余りを有する国と記載されています。周防国は大島郡・玖珂郡・熊毛郡・都濃郡・佐波郡・吉敷郡からなり、国中を流れる椹野川・佐波川・錦川などの河川が描かれています。山地は山と木々により巧みに表現されています。大内時代の中心地であった山口の高嶺と吉川領の岩国に城の天守が描かれていて、江戸時代初期の萩藩内の城郭の様子が見てとれます。