仮御手鑑 翻刻

1 後土御門院
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   千鳥
    夜をさむミ霜さへふかくをくの海の
     しほのひかたに千とりなく也    成仁
 
2 後柏原院 村すゝめ
   朝鶯
    村すゝめねくらの竹のおなしきに
     けさめつらしきうくひすの声    勝仁
 
3 後奈良院
   野花非一
    花の枝のほかにミたれてをく露の
     千くさにあまる野への秋かせ    知仁
 
4 正親町院
   岡月
    名にしおふこよひの月にときハなる
     松も色そふをかのへのさと     方仁
 
5 近衛殿尚通公 御法名 知やいかに
    知やいかに千とせの春を一すちに
     ちきる心のいと桜とは       大証
 
6 近衛殿 うらみしと
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   恨恋
    うらみしとおもへハつらき心をも
     憂身のほとのことはりにして    前嗣
 
7 近衛殿前久公 御法名 数ならぬ
   仙岩菊返歌
    数ならぬ人わきしてや忍ひ音を
     よそにハもらす山ほとゝきす    竜山
 
8 二条殿尹房公 御法名 分てまつ
   都早春
    分てまつ花の都の名にたてる
     かすみや春をさそひきぬらん    紹恵
 
9 一条殿兼良公 御法名 梅か香を
   羅浮山
    梅か香をかりねの山に夢さめて
     木すゑにさはく村鳥の声      覚恵
  
10 菊亭殿宣季公 御一字名亘 わするなよ
   和□まいる
    わするなよしはしわかるゝ旅とても
     なれし都の春のけしきを       亘
 
11 転法輪殿実量公 御法名 夕あらし
   秋夕風
    夕あらしはらふな苔のたもとにも
     露たにあらは月そやとらむ     禅空
 
12 転法輪殿実香公 御法名 吹わくる
   野径薄
    吹わくる雪風に露も玉ほこの
     みちせはからぬなひく小薄     諦空
 
13 三条西殿実隆公 御法名 春ハまた
   初春霞
    春ハまた誰にしのふのすり衣
     みたれてうすく立霞かな      堯空
 
14 三条西殿公条公 御法名 ことの葉の
   社頭祝
    ことの葉の道にひかれて君か代も
     まさこのかすにすミよしの浜    仍覚
 
15 三条西三光院殿
   鷹狩
    ふみたつるかつハのきゝす雪のうへハ
     しハしかくれむかけたにもなし   実世
 
16 三条西殿 さめつゝも
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   暁眠易覚
    さめつゝも夜ふかき夢のあやしきハ
     枕の中の鳥やなくらむ       実枝
 
17 万里小路殿惟房公 御一字名蜀 昔のとほそ
   御返事まいる
    昔のとほそおもひへぬるうき身より
     とふへき風のつてさへもなし     蜀
 
18 清閑寺殿 立そハむ
   庭松
    立そハむみとりもいく世君か代の
     はるにさかふるやとの松か枝    保房
 
19 持明院殿基規卿 御法名 風にちる
   柏霰
    風にちるをとハあられの玉柏
     もとす柴まても残るとはなし    宗栄
   
20 下冷泉殿政為卿 御法名 とはゝやな
   鹿声催涙
    とはゝやな妻とひわひてなく鹿も
     われはかりやハ涙もろなる     暁覚
 
21 飛鳥井殿雅親卿 夕つく日 御法名
   時雨
    夕つく日さそやと山のま木の葉に
     かたへ時雨る色そさひぬる     栄雅
 
  飛鳥井殿
   野宿
    ふるさとに夢もかよハすいく夜をか
     野もりかいほの月にあかさむ    雅教
 
22 飛鳥井殿 ちりて行
    ちりて行名残ハおもへ植そへん
     みきりの花の春をまつとも     雅継
 
23 飛鳥井殿 わかさ路や
    わかさ路やかさなる山ハとをくとも
     さくへき花の春やこのまし     雅枝
 
24 飛鳥井殿庶流雅康卿 御法名 書かはす
    書かはすあまたのかすをあハれ我
     一度君に逢世ともかな       宋世
 
25 飛鳥井殿 たゝひとつ
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   墳亡羊翁之高吟予又備笑具
    たゝひとつ梢にのこるありのミは
     あちきなしとや人のいふらん    雅昭
 
26 竹内殿 くれて吹
   七夕
    くれて吹おひてのかせも七夕の
     舟出やいそく天の川波       当治
 
27 綾小路殿俊量卿 御法名 たのむそよ
   恋車
    たのむそよ別のみちの柴くるま
     つまぬ日数にめくり逢よを     量秀
 
28 五辻殿
   暮秋虫
    このころはむしのなく音もよハるらし
     した露寒きみやき野ゝ原     源政仲
 
29 西洞院殿時慶卿 法名 よるへなみ
   片恋
    よるへなみしらぬみなとのかたし貝
     あひかたき身を歎くころ哉     円空
 
30 大智庵 其阿替名 今日立と
   立春をよミ侍
    今日立といへはこゝろにやとり木の
     はなさく春のまかふ空かな     心従
 
31 連歌師 定なく
    定なく降や箒木夕時雨        昌胤
 
32 連歌師 鶯の
    鶯のねよけのしるし宿の梅      紹尚
 
33 甘露寺殿 親長卿御法名 にほふかを
   梅
    にほふかを袖にうつさぬ花ならは
     おしかりぬへき梅のした風     蓮空
 
34 細川兵部大輔殿藤孝 御法名 さきのこる
   首夏藤
    さきのこる藤のうら葉のうらとけて
     ひとつにかふる夏ころもかな    玄旨
 
35 後奈良院 吉野やま
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    吉野やま春の雪とはみえながら
     かをこそかハれ花にやあるらむ
 
36 後奈良院 岩まもる
    岩まもる波のしからミかけとめて
     流もやらすこほる山川
 
37 後奈良院 音たてゝ
    音たてゝ木すゑをハらふ山風も
     けさよりはけし冬やきぬらん
 
38 後奈良院 またしらぬ
    またしらぬたひの道にそ出にける
     野くらしの原人に問つゝ
 
39 後奈良院 雪ならは
    雪ならはまかきにのミはつもらしと
     おもひとくにそしら菊の花
 
40 近衛殿信尹公 春の夜の
    春の夜の闇ハあやなし桜風
     色こそみえねかやハかたるゝ
 
41 近衛殿信尹公 いつかたに
    いつかたに引かくれなん世中に
     身のあれハこそ人もつらけれ
 
42 近衛殿信尹公 野辺の露
    野辺の露ハ色もなくてやこほれつる
     袖よりをくる萩のうハ風
 
43 近衛殿信尹公 しろたへの
    しろたへの袖のわかれに露おちて
     身にしむ色の秋風そふく
 
44 近衛殿信尹公 わすれてハ
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    わすれてハうちなけかるゝゆふへ哉
     われのミしりて過る月日を
 
45 近衛殿信尹公 命をは
    命をはあたなる物ときゝしかと
     つらきかためはなくもあるかな
 
46 近衛殿信尹公 あふことは
    あふことはさて山川のあさミこそ
     袖のミぬれてうきみ也けれ
 
47 近衛殿信尹公 世をそむく
    世をそむく所とかきくおく山は
     物みもひにそいるへかりける
 
48 近衛殿信尹公 消わひぬ
    消わひぬうつろふ人の秋の色に
     身をこからしの森のしら露
 
49 近衛殿信尹公 帰りこん
    帰りこん程をや人にちきらまし
     しのはれぬへき我身なりせば
 
50 近衛殿信尹公 せみのこゑ
    せみのこゑきけハかなしな夏衣
     うすくや人のならんと思へハ
 
51 近衛殿信尹公 しら玉か
    しら玉か露かとゝハん人もかな
     物おもふ袖をさしてこたへん
 
52 近衛殿信尹公 竹ちかく
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    竹ちかくよとこねはせし鶯の
     なくこゑきけハ朝ハさられす
 
53 近衛殿信尹公 日のひかり
    日のひかりやふくわかねハいその上
     ふりにしさとに春は来にけり
 
54 近衛殿信尹公 いつはりの
    いつはりのなき世にみえん時もなを
     おなし心や君にのこさむ
 
55 近衛殿信尹公 ほとゝきす
    ほとゝきすなくやさ月のミしか夜も
     ひとりしぬれはあかしかねつも
 
56 近衛殿信尹公 人こゝろ
    人こゝろうす花そめのかわころも
      さくたにあらて色やかハらん
 
57 (究札なし)
    思ひやる心はかりはさはらしを
     なにへたつらんミねのしら雪
 
58 近衛殿信輔公 こひしなん
    こひしなんのちはなにせんいける身の
     ためしそ人ハ見まくほしけれ
 
59 近衛殿信輔公 都にて
    都にてなかめし月のもろ共に
     たひねの空にいてにける哉
 
60 近衛殿信輔公 さくらさく
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    さくらさくとを山とりのしたりおの
     なかくし日もあかぬ色かな
 
61 青蓮院殿尊応 朝踏
    朝踏 落花 相伴出 暮 随飛 鳥 一 時帰
 
62 青蓮院殿尊応 さくらちる
   さくらちる木のしたかせはさむからて
    空にしられぬ雪そふりける
 
63 後花園院 心とや
    心とやもみちはすらむたつた山
     松ハしられしぬれぬ物かは
 
64 後柏原院
    うらみしみな今朝一ふてのをそくとも
     昨日はこひし人のこゝろを     勝仁
 
65 後奈良院 さをしかの
    さをしかの声きこゆなり宮きのゝ
     もとあらのこはき花さかりかも
 
66 後陽成院 よそにみて
    よそにみてかへらむ人に藤の花
     はひまつはれと枝ハあるとも
 
67 寛文比仙洞様 前廉之御宸辰翰 わすれしと
    わすれしと契りていてしおもかけハ
     ミゆらん物を古郷の月
 
68 二条殿尹房公 御法名 花もいま
   夏草
    花もいまなつさく露のふか草の
     さとハかりにもたれかとハまし   紹恵
 
69 二条殿尹房公 ゆふしほの 御法名
   寒草
    ゆふしほの入江の蘆のそよさらに
     霜吹まよふ風のはけしさ      紹恵
 
70 二条殿尹房公 御法名 ふけゆけハ
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   深更虫
    ふけゆけハまくらもとめてきり/\す
     七ふになるゝ十ふのすかこも    紹恵
 
71 一条殿冬経公 さひしさは
    さひしさはその色としもなかりけり
     槇たつ山の秋の夕くれ
 
72 飛鳥井殿雅庸卿 よそににぬ 内基公哥
    よそににぬ月をみよとや秋かせの
     音羽のやまは雲霧もなき      内基
 
73 飛鳥井殿庶流雅 康卿御法名 飛鳥井殿宋行 此やとの
   神祇
    此やとのわかみつならし石清水
     神のめくみの春をむかへて     宋世
 
74 勧修院殿経広卿 秋かせの
    秋かせのふき来し日より音羽山
     ミねの木末も色付にけり
 
75 烏丸殿光賢卿 故郷の
    故郷のもとあらの小萩咲しより
     よな/\庭の月そうつろふ
 
76 竹屋殿光長卿 木のま
    木のまよりもりくる月のかけミれハ
     こゝろつくしの秋はきにけり
 
77 東園殿基長朝臣 誰ための
    誰ための心つくしにあすしらぬ
     身を思ふとて世をなけくらん
 
78 野宮殿定基朝臣 大かたに
    大かたにすくる月日をなかめしは
     わか身にとしのつもるなりけり
 
79 林氏道春法印 月色幾望
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   和或人韻
   九月十三夜
    月色幾望玉漸団 朱簾移影上高欄 道春
     一天陰霽皆奇夜 錯做岐陽微雪看
 
80 和歌四天王頓阿
   のかれきてけにみるときハかはりけり
    おもひやられし深山への月
 
81 和歌所法印堯孝 紅葉浅深
   紅葉浅深 故郷暮秋 海辺暁雲
      
 
82 永源寺一糸和尚 うきよには
    うきよにはかとさせりてもみえなくに
     なとかわかみのいてかてにする
 
83 東寺金勝院白清 須磨の関
   千鳥
    須磨の関あり明の空になく千とり
     かたふく月ハなれもかなしや
 
84 山崎住妙喜庵宗鑑 けふこすハ
    けふこすハあすハ無とそふりなまし
     きらすはありとも花とミましや
 
85 周防山口大智庵其阿 散花の
    散花のミつのまに/\とめくれハ
     山にも春はなく成にけり
 
86 連歌師玄仲 こと浦の
    こと浦の風より涼けし池の松     玄仲
 
87 鳥養宗慶 あふ坂は
   開路
   月
    あふ坂はかへりこむ日をたのミても
     空行月のせきもりそなき
 
88 八条殿穏仁 いつくとも
    いつくともはるの光ハわかなくに
     またみよし野ゝやまは雪ふる
 
89 近衛殿尚嗣公 色かハる
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    色かハるミのゝ中山秋越て
     又とをさかるあふさかの関
 
90 九条殿幸家公 鶴の子の
   鶴契追年
    鶴の子の又やしはこの末まても
     ふるき例をわか代とや見ん     道家公
 
91 壬生官務孝亮 袖ひらて
    袖ひらてむすひし水のこほれるを
     春たつけふの風やとくらむ
 
92 久我殿晴通公
    あらし明まくすかはらになく鹿は
     恨てのミやつまをこふらむ
 
93 油小路殿隆基卿 秋の野ゝ
    秋の野ゝ草の袂か花薄
     ほに出てまねく袖とミゆらん
 
94 裏辻殿季福卿 をのつから
    をのつから逢はあふもたのまれす
     わかれそこひのまことなりける
 
95 岩倉殿具家卿 前廉之御筆 うつら鳴
    うつら鳴いはれの野への秋はきを
     おもふ人ともミへるけふかな
 
96 高辻殿長純卿 百敷の
    百敷の大宮人はいとまあれや
     さくらかさしてけふもくらしつ
 
97 川鰭殿基秀卿 青柳の
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    青柳の糸よりかくる春しもそ
     みたれてはなのほころひにける
 
98 水無瀬殿兼成卿 うすくこき
    うすくこき野へのみとりのわか草に
     跡まて見ゆる雪のむら消
 
99 筑前中納言秀秋卿 金吾中納言殿秀秋卿 さよしくれ
    さよしくれ故郷とをきあつまやに
     夢ち露けき草枕かな
 
100 秋田城助殿実季 秋田城介殿実季 ね覚して
    ね覚してたれか聞らん此比の
     この柴にかゝるよはの時雨を
 
101 木下宮内殿 木下宮内少輔利房 法名宗連 白妙の
    白妙の袖のわかれに露をちて
     身にしむ色の秋風そ吹
 
102 少輔東坊 松しまの
    松しまのあたのとまやもいかならん
     須磨のうら人しほたるゝかな
 
103 飛鳥井殿雅直
    おもふこといはてそたゝにやみぬへき
     われはひとしき人しなけれは
 
104 梅園殿実清
    白雲の夕ゐるやまそなかりける
     月をむかふるよものあらしに
 
105 竹中殿季有
    蛙なくゐての山ふき散にけり
     はなのさかりにあはましものを
 
106 小野徳勝院禅昌
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   扇
    袖のうへに日ハうす物のあふき哉
 
107 本阿弥光悦
    わきもこかたひねの衣うすき深と
     よきてふかなんよハの山風
 
108 宮内卿女筆
    さゆる夜は所もわかぬ霜なりや
     いかてあさ日も山にをくらん
 
109 小野通女筆
    秋をきて時こそ有けれ菊のはな
     うつろふからに色のまされは
 
110 (究書なし)
   朽木の柳を題にて所望之時
    楊枝にハせねとくち木の柳哉     玄札
 
111 (究書なし)
    池なミはかきつはたをやゆりの花   立圃
 
112 俳諧師斉藤氏 毛短に 斉藤徳元 毛短に
    毛短に鶉もけふや衣かへ       徳元
 
113 (究書なし)
   椴ニ紅梅の立双たるをミて
    立ならふもミ紅梅やニ木たけ     未得
 
114 当今様 前廉之御筆 もしほ焼 もしほ焼
    もしほ焼蜑の賤や夕煙
     立名もくるし思ひ絶なく
 
115 連歌師玄仲 代筆 はなの香や
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   花
    はなの香や四方の大満春の風     秀元
 
116 日野殿 民草も
   奉祝
    民草もめくミになひく御代の春に
     あかるをあふく天か下人      輝光
 
117 照高院道澄 いろは
    いろはにほへと
    ちりぬるをわか
    よたれそつねな
    らむゐのおく
    やまけふこえて
    あさきゆめみし
    ゑひもせす
    一二三四五六七八九十
 
118 周防山口連歌師玄作 年こえて
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   歳暮
    年こえて花鶯ハさもあらハあれ
     おしまさらめやけふの夕暮     玄作
 
119 周防山口連歌師洪仙 ふゆの名を
   款冬
    ふゆの名をいふそあやしき山吹の
     花はにほひにしるき春風      洪仙
 
120 周防山口連歌師宗漸 鵙のなく
   田家鳥
    鵙のなく門田のくろの朝日影
     よそにうつろふ村雀かな      宗漸
 
121 大内殿内連歌師隆善 日数へて
   不逢恋
    日数へておもへハよるの夢にさへ
     それとも見えぬ君か面かけ     隆善
 
122 大内殿内連歌師武之 うき枕
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   旅泊夢
    うき枕したふもしらすとまり船
     夢はとまらてかへる浪哉      武之
 
123 大内殿内連歌師家居 月をそき
   鵜川
    月をそき鵜川の岸の夜の波に
     船さしいたす袖や涼しき      家居
 
124 大内殿内連歌師隆徳 ふるさとの
   故郷夕花
    ふるさとの軒のしのふの夕露に
     みたれてにほふ花のはる風     隆徳
 
125 大内殿内連歌師興基 岩そゝく
   春田雨
    岩そゝく水もたえ/\春雨の
     ふりにしさとや小田かへすらん   興基
 
126 大内殿内連歌師承良 白砂に
   松雪
    白砂にふりこそつもれ岡の辺の
     松をはなかと雪の明けほの     承良
 
127 周防山口連歌師定珪 蔦かつら
   岡紅葉
    蔦かつら染めししくれはかた岡の
     松にもかゝる色をみせけり     定珪
 
128 周防山口連歌師宗可 鶯の
   梅欲散
    鶯の羽かせはちらせちるとても
     うつろふ梅の色とやハミん     宗可
 
129 周防山口連歌師任源 むすひつる
   女郎花
    むすひつる露やうらみん女郎花
     枕さためすなひく秋かせ      任源
 
130 大内殿内連歌師 谷ふかみ
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   氷室
    谷ふかみ茂る木かけの氷室もり
     なつなき年をいく世へぬらむ    重輔
 
131 大内殿内連歌師興滋 武蔵野や
   野雪
    武蔵野や行来たえつゝふる雪に
     みちふミまよふ遠のたひ人     興滋
 
132 大内殿内連歌師孝順 こし路へと
   夜帰雁
    こし路へといそく心そしられける
     夜ふかき月にかへる雁かね     孝順
 
133 大内殿内連歌師隆綱 絶せしの
   河
    絶せしの富のを川のなかれにや
     かミ代くもらぬ月ハすむらん    隆綱
 
134 大内殿内連歌師明源 さくらさく
   故郷霞
    さくらさくなめらの山に来てミれは
     ふりにし志賀の霞ぬる哉      明源
 
135 大内殿内連歌師長重 冬枯の
   炭竈
    冬枯の木すゑをさむミ降雪の
     うちよりけふる小野のすみかま   長重
 
136 大内殿内連歌師頼允 山たかみ
   花
    山たかみ霞にこめてさく花の
     ありとや風の空にゝほへる     頼允
 
137 大内殿内連歌師隆勝 よひのまに
   夏月
    よひのまに入ぬる夏の月影ハ
     山のはつらき心とをしれ      隆勝
 
138 大内殿内連歌師敦定 下もえの
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   沢若菜
    下もえの野沢の水の煙にそ
     つまむ若菜の跡そしらるゝ     敦定
 
139 大内殿内連歌師武将 立帰り
   浜帰雁
    立帰り浪とともにそゆく雁の
     春のはま辺に名残をそ思ふ     武将
 
140 大内殿内連歌師宥任 幾たひか
   春雨
    幾たひか袖にふりけんかり衣
     春の夕の雨の名こりを       宥任
 
141 大内殿内連歌師隆治 夏の日の
   蚊遣火
    夏の日のあつさわするゝ夕とも
     しらすやいかに蚊遣火の影     隆治
 
142 大内殿内連歌師隆幸 花にそむ
   秋露
    花にそむ露こそあらめいかにして
     なみたも袖に秋をしるらん     隆幸
 
143 大内殿内連歌師隆辰 秋のかせ
   庭荻
    秋のかせちきりし庭の宿からに
     つゆは結す軒の下おき       隆辰
 
144 大内殿内連歌師隆通 うらなれて
   旅宿重夜
    うらなれて幾夜あかしの旅の宿に
     とまるや道の関し成らむ      隆通
 
145 大内殿内連歌師隆毎 ふミ分る
   谷雪
    ふミ分る人としもなく白妙の
     雪のミうつむ谷のほそ道      隆毎
 
146 大内殿連歌師光成 みよし野や
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   故郷鶯
    みよし野や雪のふる里道絶て
     春は跡あるうくひすの声      光成
 
147 大内殿内連歌師順覚 あたし世と
   夢
    あたし世とおもひなからもかき曇る
     やミのうつゝの夢をしそおもふ   順覚
 
148 大内殿内連歌師秀満 嶺高み
   夕霧
    嶺高みいさよふ雲をたよりにて
     たなひきつゝく夕霧の影      秀満
 
149 大内殿内連歌師弥了 しきたへの
   埋火
    しきたへの枕さえたる暁に
     たのめはすこしぬるむ埋火     弥了
 
150 大内殿内連歌師儼智 この比は
   時雨
    この比はしくれかちなる四方の空に
     またそめやらぬ木々の紅葉々    儼智
 
151 大内殿内連歌師善弘 夕まくれ
   夕虫
    夕まくれ露はいとはし虫のこゑの
     ちかき霜夜をうらミとやなく    善弘
 
152 大内殿内連歌師興弐 けふあすに
   忙
    けふあすに暮ぬる年をみな人も
     おなし心の色や見ゆらん      興弐
 
153 大内殿内連歌師隆所 ときはなる
   暮春
    ときはなる松にかゝりて咲藤の
     花もちとせの春やへぬらん     隆所
 
154 大内殿内連歌師興村 はれ行か
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   五月雨晴
    はれ行か吹方かハる夕風の
     雲間は月の五月雨の空       興村
 
155 大内殿御同朋柳庵 露時雨
   紅葉霜
    露時雨千しほにそむる紅葉はの
     くれなゐうすくをける霜かな    柳庵
 
156 大内殿御同朋吉阿 むら竹の
   霰
    むら竹のうちなひきたる窓のまへに
     ふるをとたかき玉あられかな    吉阿
 
157 周防山口住大守坊良雄 おりしありと
   朝更衣
    おりしありと今朝たちかへてうす衣
     ひとへに夏の色やみすらん     良雄
 
158 周防山口神宮寺長老春誉 しつかなる
   暁
    しつかなる心を窓のたよりにて
     学ふみちしや暁ならし       春誉
 
159 山口住日誓聖人 みちのくや
   牧春駒
    みちのくや野くれ山くれ春かすミ
     こゝろひかるゝ牧のあら駒     日誓
 
160 成満寺弥阿 ほとゝきす
   郭公
    ほとゝきす有明の月の一声に
     こゝろのゆかぬ山端もなし     弥阿
 
161 周防山口条福寺快雅 おひ立て
   寄松祝
    おひ立ていく枝茂るや千代の松
     みな祝言に友なひそゆく      快雅
 
162 義隆公 小槻官務伊治代筆
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   社頭霞
    春の色は今そみかさの山高ミ
     かけてかすめる峰の松原      義隆
 
163 慈鎮和尚
   蓬莱事
    男外女といふハおさなき童又女也、徐福海
     をすきて平原広沢といふ所にとゝまりぬそ
 
164 明智日向守殿光秀
   書状披見候
   一、道今明日中可出来候由尤候
 
165 解脱上人
    或ル仏頂随□者以五仏頂明為一大
    □即為四段一□仏頂二普□成就
    仏頂段三□傘□仏頂并□仏頂明
    可弁申仏頂段□□
    □□□□
 
166 弘法大師
    是舎利子是諸法空相不生不滅不垢不浄不増
     不滅是故空中兂色兂受想行識兂眼
 
167 連歌師心敬
   一親句におひて二儀あり、一ニハ響の親句、二ニハ
    正親句也、響の親句につゐて又二種あり、
    一ニハ五音相通、二ニハ五音連声なり、五音相
    通ハゆゝしき秘事也、五音連声ハ五七五七
    の句のうつりのひゝきのきれいる歌ハ命なき歌也、
    ほの/\とをちの外山にきなくなりしはしかたらへねくら
    さためて
 
168 (極札なし)
    雪窓 □□(朱印)
 
169 雪窓 龍宮 此の弐枚極札無之
    竜宮浪動群魚従鳳羽雲
 
170 見わたせは 中院源通茂 狩野縫殿之助
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    見わたせは柳さくらをこきませて
     みやこそはるのにしきなりける
 
171 きかすとも 野々宮源定縁 吉川了也
    きかすともこゝろをせにせんほとゝきす
     山田のはらの杉のむら立
 
172 長門なる 花本祖白 山本素程
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    長門なるあふの郡の杣板ハ
     もろこし人のすさめなりけり
 
173 張良 伏原清宣幸 住吉内記
    張良遊下邳圯上有
    一老父直堕其履
    圯下顧謂良曰孺子下
    取履良愕然欲欧之
    為其老迺疆忍取履
    因跪進父以足受之
    曰孺子可教後五日平
    明与我期此良諾
    及期示一編書曰読
    是則為王者師終佐
    漢封万戸候
 
174 むかふ津の 堀川藤康綱 海北友雪
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    むかふ津のおくの入江のさゝ波ハ
     のりかくあまの袖やぬれけん
 
175 世中を 河野源季信 住吉内記
    世中をいとふまてこそかたからめ
     かりのやとりをおしむ君かな
 
176 かくてのミ 一乗院御門跡 海北友雪
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    かくてのミやむへき物か千早振
     かもの社の万代を見む
 
177 二葉より 聖護院御門跡 狩野貞実
    二葉よりたのもしきかな春日山
     木たかき松のたねそとおもへは
 
178 とやに入 花本祖白 吉川了也
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    とやに入八日やくしの日なれはや
     鷹に羽むしの薬かふらん
 
179 たくれ見る 正親町藤公通 山本玄体
    たくれ見る松のあらしやたゆむらん
     おのへにかへるさはしかのこゑ
 
180 わけ入て 鷲尾藤隆尹 山本素程
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    わけ入て袖にあハれをかけよとて
     つゆけき庭にむしさへそなく
 
181 さゝ波や 河野源季信 狩野貞実
    さゝ波やうちいてゝみれは白妙の
     瀬田の長橋雪をかけたる
 
182 浮田殿秀家公 鴈飛碧落
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    鴈飛碧落
    書青紙
    □□□□□□
 
183 八条殿智仁親王 たのめつゝ
    たのめつゝこぬ夜あまたになりぬれハ
     またしとおもふそ待にまされる
 
184 日野殿輝光卿 音はして
    音はしていさよふなミもかすみけり
     やそうら河のはるの明ほの
 
185 日野殿輝光卿 君か代は
    君か代は千世にひとたひゐる鹿の
     白雲かゝる山となるまて