山口県立山口図書館・山口県文書館/WEB版明治維新資料室

幕末の瓦版

山口県立山口図書館が所蔵する、幕末期の木版摺瓦版とロンドンで発行された萩藩(長州藩)に関係する新聞記事のイラストを紹介します。
(サムネイルをクリックすると、大きい画像が見られます)

(36×49cm)
元治元年長門の国大火之図
 元治元年(1864)8月5日、米英仏蘭の四国連合艦隊による下関砲撃を描いた瓦版です。前年5月、関門海峡を通過する外国船に対して長州藩が行った砲撃への報復のために連合艦隊が下関に集結、戦争が勃発しました。この戦争で、下関前田に設置された砲台は上陸した連合軍に占領され、施設はことごとく焼き払われました。一連の攻防は、下関戦争(馬関戦争、馬関攘夷戦争、四国艦隊下関砲撃事件)と呼ばれています。瓦版では、この戦いで炎上する下関の様子を描いています。
 参考資料 『資料幕末馬関戦争』 下関文書館編 三一書房 1971
(35×48cm)
幕末諷刺木版摺「粟の煮る間に」
 粟を煮ているわずかな間に居眠りをした大阪の「松岳山人」が見た夢を描いた風刺画です。山人が眠りの間に見た不思議な夢を絵に描き子ども達に見せたところ、我も我もと頼まれて大変なことになったと、右側の文章に記されています。
 瓦版自体には印刷年は書かれていませんが、「去年の冬ホンえらい目に」「寄せくる敵を口先で追ちらしたる」とあり、外国人を追いかける「ふく」(長州藩)、中央の大菊(朝廷)、葵の紋をつけた男(幕府)が小菊を振りかざしている絵などが描かれていることから、元治元年(1864)の第一次長州征討を始めとして、大政奉還が間近に迫る混乱の世相を諷刺した瓦版と考えられています。
 狂歌 「さまざまの事を五臓にわずらうも さめてめでたきあけの春かな」
 参考資料 『おおさか図像学』 北川央編著 東方出版 2005
(32×45cm)
小瀬川合戦図
 幕長戦争(第二次長州征討、四境戦争)における、芸州口小瀬川の戦いを描いた瓦版です。この戦争は、幕府側が敗戦し、その権威を失墜させることとなった戦いでした。
 この戦争では、大島口、芸州口、石州口、小倉口の4つの国境で幕府軍と長州軍の戦いが展開されました。芸州口の戦いは、岩国藩領和木村の戦に始まり、小瀬川の戦いへと続きました。
 瓦版は小瀬川の戦いを描いたもので、幕府軍に激しい砲火を浴びせる長州軍と、槍や刀で応酬する幕府軍が描かれています。幕長戦争では長州藩は兵を広く散らせる散兵戦術を駆使しました。散兵戦術の訓練のため用いられたのが、長門練兵場で印刷された『散兵教練書』です。
(20×27cm)
下関戦争における連合艦隊上陸図
 1864年12月24日付けの『The Illustrated London News』(絵入りロンドン・ニュース)に掲載されたイラストの1枚で、幕末期に横浜に滞在し、日本の情報をイギリス本国に知らせていた特派員チャールズ・ワーグマンが描いたものです。元治元年(1864)8月5日の英仏蘭米の連合艦隊による下関攻撃の状況を知らせています。
 『The Illustrated London News』は1842年にイギリスで創刊された絵入り週刊新聞です。1850年頃から日本に関連するニュースが掲載されています。記事イラストに添えられた説明文は、「The assault on the lower battery at Shimonoseki.-from a sketch by our special artist.-see page 624」となっています。
 参考資料 『イラストレイテド・ロンドンニュース 45b』 柏書房 2003