1 天台院


撮影 田中幸太郎
 室町時代創建と伝えられる、東光が住持をつとめたお寺です。当初は僅か3畳ばかりの書斎から、数々の物語が創り出されました。境内には、東光の文学碑があります。

※地名は小説中での表記を引用しています。
…住職は照れ臭いので顎を撫でて庭の方を見た。名も知れぬ小禽(ことり)が春日燈籠の上にとまって、チ、チ、チと啼いている。秋たけた庭は柿落葉が散りしいて掃いても掃いてもうず高いのだ、落葉焚く季節ともなれば、生駒山系は山襞(やまひだ)までくっきりと見えて、その山から飛んでくる百舌鳥が天台院の庭の柿を啄(ついば)みに来るのだ。殺生禁断の五十坪の庭だと知っているのだろう…

(巻之二所収 「真言秘密の法」より)