8 山本橋


 中野村の東側、玉串川にかかる橋で、交通の要です。当時橋のたもとに毎晩夜泣きうどんの屋台が出ていて、これが物語の謎解きになる話があります。

※地名は小説中での表記を引用しています。
…玉串川にかかっている山本橋の袂(たもと)に、毎晩、夜泣きうどんが出る。或る晩、刷子(ブラシ)用の豚毛ブローカーの芳やんが遅く大阪から帰って来て、夜食代りにうどんを食べていると、あの女が鍋焼きうどん二つを注文して帰った。(はあて。二つ注文しよったが、さてはレコが来とるな―)と勘づいた。この辺の土地の言葉で「考える」というのがある。もちろん考えることから出た意味だが、こっそり覗くことまでも考える範疇に入っているのだ。そこで芳やんは鍋焼きうどん二つの行方を突きとめるために考えた…

(巻之一所収 「河内勘定」より)