10 河内山本駅


 登場人物が鉄道を利用する姿が作中によく描かれています。普段の東光も所用で大阪へさかんに出かけており、終電で帰宅する描写もあります。

※地名は小説中での表記を引用しています。
…その日の午後、一行は中山七里(なかやましちり)を見物して汽車に乗った。乗ってみれば来た時と同じく、冷酒のぐい呑み、着く駅ごとに汽車弁当を買うたり、滅茶苦茶に酩酊して仕舞った。それでも河内山本駅は乗り越すほどでなかったから、生酔い本性に違わずである。
 「とうとう着いたぜ」
 組合長は相変わらず泥のように酔うていながら、それでも生れた土地(ところ)の匂いはわかるとみえて、張りつめた気がゆるんだように言った…

(巻之一所収 「ド根性」より)