14 銭湯(当時)


撮影 田中幸太郎

※地名は小説中での表記を引用しています。
…「そうか。勤めにもいかんと、昼風呂に入ってるようでは、どうせ碌(ろく)な奴やないな」
 「やい。われ。飛んだこと言うな。この辺に居る奴は、大概、昼風呂に入っとんで。昼間っから銭湯に入れる身分を、けなるがり※よる奴かて居るんや。あんまり碌でもない奴などと人聞きの悪いこと言うてくれるな」
村の動静は昼風呂からわかると言われるほどなので、この女の表も裏も吟味されて噂になった。村の女どもも以後この女に注意するようになって、わざわざ昼風呂にやってきて女の正体を突きとめようという篤志家(とくしか)もあった…
※うらやましがる

(巻之一所収 「河内勘定」より)