行橋市域の変成岩は、後述する花崗岩類の貫入によってホルンフェルス化しているため、放射年代の測定はなされていない。しかし、その分布位置や岩石学的性質から判断すると、すべて周防変成岩に相当するとみなされる。
分布・地質関係
変成岩の分布は、行橋市域の東部、南部および西部の三地域に分散しているが、中央部の第四紀層の下部にも伏在しているものと予測される。
まず、東部の分布域は、蓑島から長井を経て稲童にかけて、ほぼ南-北方向に狭長な露出を示す。沓尾東方では、平尾花崗閃緑岩によって、また覗山南西方では、真崎花崗岩によって貫入され、強い接触変成作用を受けている。この分布域は、蓑島の北方にあたる苅田町南部につながっている。
南部の分布域は、矢留から大谷を経て鋤迫西方にかけて、東北東-西南西方向に延び、その北側は平尾花崗閃緑岩によって、また南側は真崎花崗岩によってそれぞれ貫入され、強い接触変成作用を受けている。
最後に、西部の分布域は、矢山から塔ケ峰を経て別所にかけて広がり、さらに西方の平尾台南部や勝山町北部に連続している。その分布域の南東部では、平尾花崗閃緑岩によって貫入され、市境界に隣接する北東部では、平尾石灰岩(呼野層群)がスラスト(衝上断層)を介して衝上(しょうじょう)している。
以上のように、変成岩の分布が点在していたり、花崗岩類に貫入されてはいるが、その片理面の一般走向は東北東-西南西を示し、北に四〇~六〇度傾斜するといった単斜構造をなしている。この構造は周防変成岩の一般的な構造に調和的である。
肉眼的性質
当地域の周防変成岩は、原岩の性質に基づいて、泥岩起源の泥質片岩、砂岩起源の砂質片岩および玄武岩質岩石(緑色岩)起源の塩基性片岩に区分される。泥質片岩が最も一般的に産出するが、しばしば砂質片岩や塩基性片岩の薄層を伴い、混在して産していることもある。しかし、後述する接触変成作用を受けているため、肉眼的にこれらを識別することは、困難なことが多い。これら三種の片岩類の構成鉱物は、微細なため、肉眼では識別できない。また、曹長石(そうちょうせき)の点紋(てんもん)(斑状変晶(はんじょうへんしょう))は、全域を通じて、形成されていない。以下に、各片岩の特徴的な性質を列記する。
泥質片岩は黒色片岩とも呼ばれ、黒色で絹糸(けんし)状光沢を示し、細粒で剥離(はくり)性に富む岩石である。微細な黒と白の縞(しま)模様が顕著なこともあり、それらが複雑に曲がりくねった微褶曲(びしゅうきょく)を示すことも多い(写真2)。この微褶曲は、泥質片岩が形成される時(広域変成作用時)に、強い圧縮力を受けた証である。
砂質片岩は砂岩がやや片状に変化したように見え、灰色~灰緑色を示すことが多い。砂岩片岩ともいう。泥質片岩に比べて、塊状な感じが強く、微褶曲することも少ない。
塩基性片岩は緑色片岩とも呼ばれ、一般に緑色~暗緑色を示し、片状から塊状まで変化に富む。砂質片岩に酷似することもあるが、やや軟らかい感じがする。
偏光顕微鏡による観察
当地域の周防変成岩は、すべて花崗岩類による接触変成作用を受けているので、広域変成作用時の鏡下の性質を留めていない。接触変成作用の最も弱い試料を選んで、鏡下の性質を述べる。
泥質片岩は片状組織と微褶曲構造を示し(写真3)、白雲母と緑泥石が定向配列をなす。主な変成鉱物の組み合わせは、白雲母-緑泥石-曹長石-石英-炭質物であり、緑れん石やざくろ石を伴うこともある。砂質片岩の主鉱物組み合わせも、泥質片岩とほぼ同様である。塩基性片岩の主鉱物組み合わせは、緑れん石-アクチノ閃石-緑泥石-曹長石-不透明鉱物と推定される。以上の鉱物組み合わせは、変成相的には緑色片岩相に相当するものである。しかし、藍閃石(らんせんせき)などの高圧条件を指示する鉱物が産出しうる可能性は、否定できない。