地域史としての原始・古代

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 先史時代から日本列島における人間の生活は、自然環境から恵まれる資源に依存した生業形態を生み出し、その相互扶助ともあいまって地域住民の社会が形成されてきた。日本列島における自然環境と住民とその生業との関係は次の三類型に大別することができるであろう。
 ①山岳地域  山の民―狩猟・焼畑
 ②平野地域  里の民―水稲農業
 ③海浜地域  海の民―漁業
 これらの各文化類型は相互に不足部分を補充する交流活動を行いながら、全体的なバランス(統一性)を維持してきたと言えるのである。このような視点は、日本列島の各地域にみられる基本的な歴史的特性といってよいであろう。地理的景観によってはいずれかが欠落する場合もあろうが、日本列島の何処ででも適用できる視座であり、地域史の基点はここから出発する。歴史の進展はムラからクニへ、さらに統一国家へと推移してゆく過程で、中央と地方、地域相互の政治的・経済的動向が時には大きく、時には小さく働きながら地域の歴史は動いてきたのであった。行橋市とその周辺の歴史もまたその例外ではない。本巻は各時代にわたってその歴史的特色を叙述しながら、新しい行橋市の歴史観を構築しようとするものである。