我が国最古の横口式石室は、現在のところ佐賀県東松浦郡浜玉町の谷口古墳の石室である。明治四一年(一九〇八)に地元民によって発見され、位至三公(いしさんこう)鏡、仿製三角縁神獣鏡などの銅鏡や石釧、鉄器類などが出土している。全長七七メートルの前方後円墳である。後円部に竪穴式石室が東西並列し、各々長持形石棺が埋納されていた。これまで四世紀末頃の竪穴式石室をもつ畿内型古墳とみなされてきたが、昭和六〇~平成二年(一九八五~九〇)の六年間にわたる保存修理事業に伴い、東西両石室とも石室の南側小口(こぐち)に横口部と羨道(せんどう)(通路)、左右の積石壁が確認された。
先行する東石室は、全長二・九五メートル、幅一・六メートル、側壁は断面三角形状の合掌形である。横口は南小口の上方三分の一にあり、竪穴式石室の構造を基本としながら横口構造を取り入れた竪穴系横口式石室の最古例である。